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会長不在 活動岐路に 東広島市原爆被害者の会 故高山氏が20年間担う

 被爆体験の継承や資料収集に長年尽力した、東広島市原爆被害者の会の高山等会長が6月上旬に89歳で亡くなったことが、市内で今月あった原爆死没者慰霊式で明かされた。同会は当面、会長不在で活動を続ける。会の担い手となる被爆2世の掘り起こしも課題となっている。

 高山さんは山陽中2年の時、爆心地から約2キロの広島市皆実町(現南区)にあった学徒動員先の工場で被爆。その後、県内で中学教師を務める傍ら、被爆体験の聞き取りを始めた。証言集は英訳して各国の知人たちにも送った。

 退職後は精力的に被爆資料を収集。東広島市原爆被爆資料保存推進協議会の会長も務めた。同市八本松南の福祉施設「松翠苑」(現八本松地域センター)にあった資料展示室の市中心部への移設に尽力。被害者の会では約20年にわたり会長を務めた。

 高山会長の死去に伴い、会の運営は岐路を迎えている。現在は毎年8月の慰霊式の開催が唯一の活動で、会員名簿も整っていない。2日の式は新型コロナウイルスの影響で規模を縮小したこともあり、被爆者の参加は1人だけだった。

 市によると、被爆者健康手帳を持つ市内の被爆者は3月末で1691人。副会長を担う被爆2世の鈴木利宏さん(61)=同市高屋町=は「手を尽くして仲間を集めつつ、市民が広く関わりやすい活動の形を模索していく」と話している。(堅次亮平)

(2020年8月6日朝刊掲載)

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