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連載・特集

艦載機移転3年 <上> 進む軍事拠点化

騒音悪化 広域で確認 周辺情勢 訓練影響か

 「ドーン」「バリバリバリ」。地面が震えるようなごう音が浜田市旭町の認定こども園「あさひ子ども園」に響き渡った。昨年11月17日の午前9時半、1歳児11人が園庭でボール遊びをしている時だった。真上に米軍岩国基地(岩国市)所属とみられる戦闘機が突然姿を見せ、通り過ぎた。

 園児は泣きだしたり、うずくまったり。「ものすごい音。駆け寄ってきた子どもを思わず抱きかかえた」。保育士の大屋幸さん(27)は恐怖を感じた当時の状況を振り返る。園の近くの騒音測定器は「電車が通る時のガード下」に相当する104・6デシベルを記録。女の子の一人は覚えたばかりの言葉で「ひこうき、こわい」と繰り返していたという。

被害訴え増加

 2018年3月、厚木基地(神奈川県)にいた空母艦載機約60機の移転が完了した岩国基地。所属する軍用機は従来の2倍の約120機となり、嘉手納基地(沖縄県)の約100機をしのぐ。この3年、広島、島根両県にまたがる訓練空域「エリア567」では、騒音や低空飛行の被害を訴える声が増えている。

 データも訓練の増加を裏付ける。防衛省が設置した騒音測定器の観測データによると、ほとんどの人が「うるさい」と感じる70デシベル以上の騒音が浜田市旭町で20年度は2月末までに632回を記録。19年度1年間の484回を上回り、15年度以降で最多だった。

 広島県北広島町八幡地区でも住民が恐怖を感じる訓練が相次ぐ。「自分が標的にされたと思った」。農業高木茂さん(66)は、移転完了直後の18年6月7日、当時勤めていた八幡郵便局の真上で急降下と急上昇を繰り返す戦闘機の姿に青ざめた。

 約5キロ南の聖湖上空ですることが多かった訓練が、この日は住宅や商店の点在するエリアで4、5回続いた。近くの騒音測定器は106・6デシベルを観測。「郵便局内は仕事どころではなくなり、外に出て訓練を見守るしかなかった」と憤る。

 騒音に悩む住民の声は米軍に届いているのか。岩国基地報道部は中国新聞の取材に「米軍の飛行運用に関連する騒音が地元の方々に引き起こす不都合は遺憾に思う」とするものの、具体的な訓練の内容や目的は明らかにしていない。広島県や島根県だけでなく、米軍機の目撃が急増している愛媛県も騒音被害の軽減や訓練情報の提供を国に求め続けている。

空軍機も飛来

 ただ、中国が沖縄県・尖閣諸島周辺や南シナ海で活動を先鋭化させる中、専門家には米軍機による訓練はさらに増えるとの見方が強い。軍事評論家の稲垣治氏は「尖閣だけでなく、インド太平洋地域全体を見渡した米軍の演習や作戦展開が激化することは確実だ」と指摘する。

 昨年12月には米空軍の戦略爆撃機B1が岩国基地に飛来した。今月も同じく米空軍のステルス戦闘機F22が飛来し、訓練を繰り返すなど海兵隊と海軍の拠点である岩国基地に新たな役割を持たせる動きもある。

 市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会」共同代表の坂本千尋さん(68)=廿日市市=は訴える。「この3年で米軍機の騒音への不安の声は岩国市だけでなく、むしろ周辺地域で強まっている。国は米軍の言いなりではなく、市民の安全や安心を守る立場で動いてほしい」(永山啓一)

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 空母艦載機の移転により、極東最大級の航空基地に変貌し、30日で3年となる米軍岩国基地。基地がある岩国市はもとより、周辺にも大きな影響を及ぼしている。現状と課題を報告する。

(2021年3月28日朝刊掲載)

艦載機移転3年 <中> 交付金の恩恵

艦載機移転3年 <下> 広がる訓練地

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