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輜重隊遺構 保護策を 考古学協会、広島市に要望

 日本最大の考古学会、日本考古学協会(東京)は5日、サッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(広島市中区)で見つかった旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」施設の遺構に関する要望書を市に提出した。市民、学識経験者の意見を広く聞き、遺構の重要性と価値を十分に検討した上で適切な保存対策を取るよう求めている。

 要望書は、松井一実市長宛て。再開発で被爆の痕跡の多くが失われていることなどを挙げ、今回の遺構は「学術上極めて重要」と強調。十分な時間を取って意見聴取や発掘調査をし、スタジアムの工期や工法を見直すなどして、「現地保存を含めた遺跡の保護策」を講じるよう促している。

 協会の埋蔵文化財保護対策委員会委員の鈴木康之・県立広島大教授たち3人が市役所を訪れ、市文化スポーツ部の松嶋博孝部長に手渡した。鈴木教授は今回出土したような陸軍厩舎(きゅうしゃ)の現存例は非常に少ない可能性があるとし、「全国的にも貴重だ」と強調。「見学した多くの市民も感銘を受けている。スタジアム建設に反対するわけではなく、遺構を壊す前に、次世代へ遺産をどう残すかを議論する機会を設けてほしい」と訴えた。

 一方、市は輜重隊遺構について、8月中旬以降から写真などによる記録を終えた部分から順次撤去する方針を示している。松嶋部長は「一部を切り取り、活用を考える」と従来の方針を説明した。(水川恭輔)

(2021年8月6日朝刊掲載)

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