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連載・特集

核兵器はなくせる 第3章 モンゴルの挑戦 <5> 確かな将来

■記者 吉原圭介

非核 中露と条約探る 小国に安全保障策提供

 大統領が執務する政府宮殿前の広場で、卒業式を終えた大学生たちが着飾り、記念撮影をしていた。春の日差しが暖かい5月初め。宮殿の正面階段上に威風堂々と鎮座するチンギスハンの銅像が、この国の将来を担う若者たちを見守る。

 広場のはす向かいにある外務省で4月下旬にあった非核兵器地帯に関する国際会議。主催したモンゴル政府はその経験を生かした国際貢献に言及した。

 一つは「一国非核の地位」を目指す他国への支援。複数国家による従来型の非核兵器地帯に入れない小国にノウハウを提供する。例えば、核兵器保有国の中国とインドに挟まれたネパール。非保有国と国境を接していない点で、モンゴルと地理的条件は同じだ。

 モンゴルの非核政策を先導するジャガルサイハン・エンクサイハン駐オーストリア大使は「世界で非核兵器地帯が増える中、小国が見落とされてはいけない。一つの国家として安全保障を得る権利がある」と指摘する。

 核兵器開発が疑われるイランと、核の「闇市場」の中心となったパキスタンに挟まれたアフガニスタンにも注目する。「核兵器や放射性物質の密輸ルートになる可能性がある。領土内に核兵器やそのシステムの一部が持ち込まれないよう確約を得るべきだ」

 エンクサイハン氏はさらに、北東アジアや中東での非核兵器地帯形成への貢献も口にする。確かにモンゴルは2000年の国連総会で、自国にロシア、中国、韓国、北朝鮮、日本を交えた計6カ国による北東アジア安全保障メカニズム構築を提案した実績もある。

 そして、自国の将来への模索が続く。

 「一国非核の地位」の次のステップは、法的拘束力を持たせるためのロシア、中国との3カ国条約の締結。見通しについて、スフバータル・バトボルド外交・貿易相(45)に取材を申し込むと、文書で回答が届いた。

 「草案についてさらに議論が必要だ。締結がいつになるか、言うのはまだ早い」。関係者によると、モンゴル国境近くに放射性物質を廃棄しない条項を盛り込むなど、さらに調整が必要という。

 大国に囲まれた小国が果敢に挑み続ける「非核の安全保障」の確立。プンサルマー・オチルバト元大統領が強調する。「人類が造った核兵器は、私たち人類によってなくせる。日本人はほかのどの国民より、その危険性を知っている。この分野でモンゴルと日本が協力すれば、きっと成果が出せる」

(2009年6月6日朝刊掲載)

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