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連載・特集

核兵器はなくせる 第6章 揺れる北東アジア <8> 非核の傘

■記者 林淳一郎、金崎由美

「3+3」安保協議を 被爆国、議論する時

 二つに割れた直径約1・5メートルの球体を人々が支える。オブジェ「ひとつになる地球」は2002年、韓国の坡州(パジュ)市が設置した。北朝鮮との南北融和ムードの高まりを背景に、朝鮮半島の統一と世界平和実現への願いをこめた。

 「対立は戦争の火種となり、核兵器は人類を破滅へと導く。それは決して平和な暮らしを保障しない」。約60キロ南の首都ソウル。野党の民主労働党の権永吉(クォンヨンギル)議員(67)は、持論の「多国間集団安保体制」を説く。国際的な議員組織、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)のメンバーでもある。

 国々が協調し、地域という「面」で核兵器に頼らない安全保障を築く。北東アジア非核兵器地帯の形成だ。

 具体的な構想は既にある。日本と韓国、北朝鮮が核兵器を持たない代わりに、この3カ国を米国、中国、ロシアは核攻撃しないと約束する多国間条約。6カ国協議の構成国であり、「3+3」構想とも呼ばれる。

 土壌も整っている。日本は非核三原則が国是。韓国と北朝鮮は1991年に朝鮮半島非核化宣言に合意した。中国は核兵器の先制不使用を宣言し、「核兵器のない世界」を唱える米国はロシアと核軍縮交渉を進める。

 「条約が成立すれば日本や韓国、北朝鮮の安全保障は法的に確約され、核攻撃を受ける危険も、核兵器を持つ意味もなくなる。まず協議のテーブルにのせることだ」。96年から「3+3」構想を温めてきた非政府組織(NGO)「ピースデポ」(横浜市)の梅林宏道特別顧問(71)は話す。

 ただ、北朝鮮が6カ国協議からの離脱を表明した今、「いろんなチャンネルで各国政府に迫っていくしかない」と梅林氏。年内にも日韓両国の国会議員有志による会合を計画している。

 日本の政治の場でも動きがある。民主党核軍縮促進議連は昨年8月、東北アジア非核兵器地帯条約案を発表。「核の傘から半分出る」と議連会長の岡田克也幹事長(56)は、米国に核兵器の先制使用は求めず、日本が核攻撃をされた場合に米国の核に頼るとの論理を説明する。

 自民党内でもオバマ米大統領のプラハ演説に呼応し、米国の議員に包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を働きかけようとの声が出ている。非核の風は吹き始めている。

 現在、地球上で南太平洋や中央アジアなど四つの非核地帯条約が発効した。国の数にして65。核兵器が唯一使用された日本は含まれていない。

 米国の核だけが北東アジアを守る「盾」なのだろうか。被爆国こそ、ぶれることなく、核兵器に依存しない安全保障を議論する時ではないか。

(2009年7月18日朝刊掲載)

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