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連載・特集

核兵器はなくせる 第6章 揺れる北東アジア <7> 和平への道

■記者 林淳一郎、金崎由美

北朝鮮対話 鍵は米国 中国含め結束・支援を

 青い国連旗が立つテーブルの真ん中を、韓国と北朝鮮の軍事境界線が走る。板門店(パンムンジョム)の会議場。1953年の停戦協定以降、両国はこのテーブルを挟んで軍事協議に臨む。平時は観光客も入室できるが、警備兵に話しかけてはならない。

 そんな緊張状態が半世紀を超えた今、北朝鮮の核兵器開発が「停戦から平和協定へ」の流れを阻む。北緯38度線の「重い扉」を開く鍵はないのか―。

 韓国紙ハンギョレで15年余り朝鮮半島の外交問題を追う姜泰浩(カンテホ)記者(51)は「制裁など強硬一辺倒の対応では解決できない」。北朝鮮の核兵器放棄を目標に、経済や人権など同国が抱える懸案を同時に解決する「非核化ロードマップ」づくりを提案する。体制維持が核開発の大きな目的とされる北朝鮮に対し、「核抜き」安全保障の環境を構築していく考え方だ。

 首都ソウルにある韓国外交安保研究院の尹徳敏(ユンドクミン)教授(49)も「平和解決への唯一のプロセスは対話」と言い切る。「北朝鮮が一貫してメッセージを送ってきた先は韓国でも中国でもない。それは米国だということに注目すべきだ」

 核兵器の放棄が可能とみる根拠は、今年1月13日、北朝鮮外務省が発表した談話にある。「米国の核の脅威が除去され、南朝鮮(韓国)に対する米国の核の傘がなくなる時、われわれの核兵器も不要となるだろう」。オバマ米大統領就任の1週間前だった。

 2005年9月の6カ国協議共同声明も根拠となり得る。6カ国は「行動対行動」の原則、すなわち互いに協調して合意を履行すると約束した。これに従えば、米国が敵視政策の解消へと動くならば北朝鮮は核兵器の放棄へと行動せざるを得なくなる。

 ただ北朝鮮は今年4月、6カ国協議からの離脱を表明。自ら対話のテーブルをけった。韓国の李明博(イミョンバク)大統領は6月の訪米の際、北朝鮮を除く5カ国での協議を提唱したものの、新たな対話の枠組みは、まだ見えない。

 現状では北朝鮮の次の手も読みにくい。だが日本にとっても北朝鮮との対話再開は、拉致問題を解決するうえでも重要な鍵を握る。

 外務省国際情報局長や防衛大教授を務めた孫崎享さん(65)は、米国による北朝鮮の体制保障がポイントと指摘する。「米国が北朝鮮の政権崩壊は目指さないという外交の枠組みをつくれるか否かだ」

 尹教授も指摘する。「中国や日本、韓国など関係国すべてが結束したうえで、米国が真のチェンジを図る。それ抜きに北朝鮮の変化はない」。核なき世界を目指すオバマ氏の外交手腕と、関係国の支援が問われる場面だ。

(2009年7月17日朝刊掲載)

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