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連載・特集

核兵器はなくせる 第7章 再出発のとき <4> 超大国の足元

■記者 金崎由美

「戦士」4人 政権と結束 日本の態度 行方左右

 4人の「冷戦の戦士」が傍聴席で見守っていた。2007、2008年の2度にわたり、米紙ウォールストリート・ジャーナルに核兵器廃絶の必要性とその方策を寄稿した元米政府高官たちだ。

 9月24日、国連安全保障理事会の首脳級特別会合。「核兵器のない世界」実現への決意を込めた決議が、5保有国も含めた全会一致で採択された。

決議へ周到準備

 議長を務めたオバマ米大統領が直後のスピーチで、4人が陣取る傍聴席を見やった。「わが国も、ここにいるシュルツ、ペリー、キッシンジャー、ナンという民主、共和両党のリーダーが一つにまとまっている」。廃絶に向けた核超大国の結束をアピールした。

 ナン氏らがワシントンに設立した民間団体「核脅威イニシアチブ(NTI)」のスティーブ・アンドレアセン氏(47)が、4人の思いを代弁する。「心から喜んでいたよ。自分たちが提言で示したビジョン、それに目標実現へのステップと重なり合う決議を世界が共有したんだからね」

 アンドレアセン氏はクリントン政権当時、ロシアとの戦略兵器削減条約(START)交渉を担当。現在は4人の意見や活動の調整役を務めている。「安保理会合まで何かと忙しかったよ」。何げない言葉が、オバマ政権と老練の政治家4人が共同で、今回の安保理決議に向けて入念に準備していたことをうかがわせる。

 オバマ大統領は今回の国連総会の一般討論演説でも、子どもに残したい世界の「四つの柱」のトップに「核兵器の拡散を阻止し、核兵器のない世界を目指す」を挙げた。4月のプラハ演説と同様に、核拡散防止条約(NPT)体制の強化を明言することも忘れなかった。

戦力保持求める

 新型核兵器の開発など「使える核」を追求したブッシュ前政権とは百八十度の転換。しかし、そんなオバマ政権にも喫緊の課題がある。年内にも固める長期的な核政策「核体制の見直し(NPR)」で、国防戦略での核兵器の役割をどこまで限定できるか―。

 ワシントン中心部にあるプラウシェアズ基金の事務所で、核戦略に詳しいジョセフ・シリンシオーネ理事長(59)がもどかしそうに語った。「同盟国の要求が妨げとなるかもしれない」

 その同盟国とは日本だ。被爆国としてこれまで、核兵器廃絶を世界に訴えながら、米国には強固な核戦力の保持と核を先制使用するカードの温存を求めてきた。そして鳩山由紀夫首相が率いる新政権が、この矛盾した政策を変更するか否か、明確な方針表明はまだない。

 「国連での鳩山氏の演説は力強かった。だが、もっと明確で具体的なメッセージがなければ米国に届かない」とシリンシオーネ氏。核大国の「有言実行」を被爆国が左右する。

(2009年10月7日朝刊掲載)

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