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連載・特集

核兵器はなくせる 第8章 米国は今 <2> 初の予算

■記者 金崎由美

新型核開発 ゼロ計上 原潜更新は満額回答

 米国の会計年度は10月に始まる。オバマ政権で初となる2010会計年度(2009年10月~2010年9月)予算が議会審議で最終確定するのは例年同様に越年が確定的。だが大枠が固まった分野もある。エネルギー省の核兵器関連予算は約64億ドル(約5760億円)、国防総省の総額はイラク・アフガニスタン関連を除いて約5千億ドル(約45兆円)だ。

 「ブッシュ前政権とほぼ同じ規模。ただ中身は明らかに違う」。シンクタンク「軍備管理・軍縮センター」のトラビス・シャープ研究員はワシントンの連邦議会にほど近い事務所で、そう分析した。

 前政権がこだわった新型核「信頼性代替弾頭(RRW)」の開発費用は姿を消し、欧州へのミサイル防衛(MD)予算は減額となった。現政権は一方、国際原子力機関(IAEA)や包括的核実験禁止条約(CTBT)の国際監視経費に対する負担を増額要求した。

 大統領が訴える「核兵器のない世界」と相いれない予算もある。「基地を抱えた選挙区選出の議員たちの声は強いからだよ」。シャープ氏が指摘するのは、オハイオ級原子力潜水艦の更新計画だ。

 核兵器搭載を目的とした戦略ミサイル原潜。2027年から退役が始まるのを見越し、政権は次世代艦の設計費3億8750万ドル(約349億円)を要求し、議会は満額回答した。

 また、政権の意向に議会側が抵抗したのが、1950~60年代に造られた戦略爆撃機B52の後継機開発計画である。オバマ政権は白紙か延期の方針を打ち出したのに対し、議会の一部が反発。予算の大枠を定める国防授権法案に「次世代爆撃機の技術開発計画への支持は米国の政策」との修正を加えた。

 今月2日、連邦議会に隣接した共和党社交クラブで、米国防大学と軍需業界団体が主催する朝食会があった。オムレツやパンをほおばる議会関係者らを前に、ルイジアナ州に今夏発足したばかりの米空軍グローバルストライク司令部のクロッツ司令官がオバマ氏のプラハ演説に触れた。

 「大統領は『(核)兵器が存在する限り、安全かつ効果的な兵器を維持して敵に対する抑止力を保ち、同盟国の防衛も保証する』とした。まさにわれわれの任務だ」

 司令官は「核能力を持つ戦略爆撃機は核抑止力として絶対に不可欠」とも付け加え、予算復活をアピールした。

 国内の政治力学にさらされる予算編成。全米科学者連盟のハンス・クリステンセン氏は「オバマ政権がその長期戦略で、潜水艦など核の運搬装置削減を大胆に打ち出す可能性が消えたわけではない」とみる。

(2009年10月15日朝刊掲載)

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