×

連載・特集

核兵器はなくせる 第10章 火種の中東 <5> ゼロへの道筋

■記者 吉原圭介

エジプト軸 模索続く 「核の傘不要」と主張

 中東が平和になればイスラエルは核を手放すのか―。まずイスラエルで聞いてみた。

 国家安全保障研究所のエミリー・ランダウ研究員は、それが中東非核化にとって「唯一の道」と答えた。「核兵器を持っているからイスラエルが憎悪されているのではない。嫌われているから、持っているのよ」

 イスラエル国会(クネセット)のドブ・ヘニン議員は「先にイスラエルが核を手放す道も同時に追求すべきだ」と説く。イランの核開発疑惑やパレスチナ問題も念頭に「中東は短期間のうちにさらに危険度が高まった。今は分岐点。イスラエルとアラブ諸国、そしてイスラエルとパレスチナがいかに平和的に共存できるか。それが、中東が崩壊せずにすむ鍵だ」。

 一方、エジプトは核兵器を含め、すべての大量破壊兵器のない中東を目指すべきだと主張してきた。1995年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議での「中東決議」にも盛り込まれた。

 ただ進展はない。このためエジプト政府は3日から米国で始まる再検討会議であらためて提案する構え。非同盟諸国(NAM)グループの議長国でもあり、現在、米国と政府高官レベルでの調整に入ったという。

 昨年夏。訪米したムバラク大統領は、「核の傘」提供を持ちかけたオバマ大統領に「必要ない」と答えた。

 エジプトは非大量破壊兵器地帯を言いだす前の1974年、イランとともに中東非核武装化決議案を国連総会に提出している。つまり「中東の非核化」はエジプトにとって息の長い取り組みであり、自国が核兵器で守られるとの選択肢はない。

 もっとも「外国の軍隊が駐留すれば、その国に服従することを意味するからだ」とアルアハラム政治戦略研究所のエマード・ガード研究員。大統領が核の傘を拒否した真意をそう分析してみせる。

 それでもエジプト諮問評議会(国会に準じた機関)のモスタファ・エルィ・サイフ議員は強調する。「イスラエルに続きイランも核兵器を保有すれば、他国が刺激を受ける。だからイスラエルに核の放棄と、非保有国としてのNPT加盟を求める。イランに対しても、軍事利用させない取り組みが欠かせない」

 それには「核の傘」の提供ではなく、もっと別の米国の尽力が必要と訴える。「イスラエルは西洋のおかげで核兵器を保有し、その後も西洋に擁護されてきたではないか。原因を作った西洋こそが、イスラエルを普通の国にする責任がある」

(2010年5月1日朝刊掲載)

この記事へのコメントを送信するには、下記をクリックして下さい。いただいたコメントをサイト管理者が適宜、掲載致します。コメントは、中国新聞紙上に掲載させていただくこともあります。


年別アーカイブ