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連載・特集

核兵器はなくせる 第12章 扉を開くとき <3>

■記者 「核兵器はなくせる」取材班

廃絶 脅威排除の早道

 「どこかが核兵器を持つ限り、他の国も手に入れたがる」「核物質・技術の拡散はますます進み、入手しやすくなっている」

 各国の元首脳たちが被爆地広島に集った4月中旬のインターアクション・カウンシル(OBサミット)。参加者は口々に、核兵器が使用される脅威はかつてなく高まり、取り除くには核兵器をなくすしかないとの強い危機感を口にした。

 米国と旧ソ連が互いに核ミサイルの照準を向けた東西冷戦は終結した。だが、管理の甘い核兵器や核物質が盗まれ、使用される「核テロ」の懸念は21世紀に入って急激に高まっているとされる。

 北朝鮮のように核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言して核保有へ走る国も現れた。そしてパキスタンの核兵器開発には、核関連の資機材を秘密裏に売買する「闇市場」が深く絡んでいた。

 ところが国際社会はこうした危機に対応できていない。

 核兵器材料の供給を絶つ兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約は、ジュネーブ軍縮会議での交渉が始まらず、足踏み状態が10年以上続く。包括的核実験禁止条約(CTBT)も米国での批准の見通しが立たず、発効していない。

 一方、原子力発電所の新設の動きは世界に広がる。それは「平和利用の権利」であるものの、ウラン燃料の濃縮作業やプルトニウムを含んだ使用済み燃料の再処理を独自に進めようとする国が増えれば増えるほど、管理の不手際による核物質の流出や軍事転用の懸念も強まっていく。

 核兵器はそのすさまじい破壊力や非人道性から「絶対に使われることのない兵器」とも言われる。これを「使わないのだから自衛のためなら持ってもいい」と核武装の論拠にする人もいる。だが万一の流出の懸念が排除できない限り「決して使われない」とは言い切れない。

 つまり一部の国が特権的に核兵器を保有する限り、それに反発し核武装を図る国が現れ、核弾頭はテロリストたちの標的となる。核拡散を防ぐには、地球上からの核兵器の根絶が最も有効であり、結局は早道となる。

 5月のNPT再検討会議では最終文書に残らなかったものの、核兵器廃絶の行程表をつくる国際会議を開催する案が議題に上った。平和市長会議は2020年までの廃絶を訴え、国際的な有識者会議グローバル・ゼロは30年の全廃を提唱。今回の再検討会議でもエジプトやキューバなど非同盟諸国は「2025年までの廃絶」を主張した。

 再検討会議では保有国の反発を受け、こうした廃絶目標年次の合意はかなわなかった。だが保有国こそ、核物質の管理強化などは対症療法にすぎず、拡散を防ぐ根本的解決にはならない現実を直視すべきではないか。

(2010年6月16日朝刊掲載)

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