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連載・特集

核兵器はなくせる 第12章 扉を開くとき <6>

■記者 「核兵器はなくせる」取材班

被爆国の責任 まず行動

 与野党第1党の民主、自民両党は17日、それぞれ参院選に向けたマニフェスト(政権公約)を発表した。民主党は外交・安全保障分野で「核兵器のない世界」を実現する方策として、核兵器数の削減、核関連条約の早期実現、北東アジアの非核化をうたい上げた。

 昨年夏の総選挙で歴史的な政権交代を果たした民主党。首相に就任した鳩山由紀夫氏は「核兵器廃絶の先頭に立つ」と言い切った。9月末には、オバマ米大統領が招集した国連安全保障理事会首脳級特別会合での演説で、廃絶に向け世界をリードする決意を「唯一の被爆国として果たすべき道義的責任」とあらためて強調した。

 それは、いつ実現するか分からない「究極的廃絶」との外交目標をしばしば口にしてきた自民党中心政権からの決別宣言であり、変革アピールでもあったはずだ。

 しかし、「先頭に立つ」絶好の場だった今年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に鳩山氏の姿はなかった。そして廃絶を訴えながら米国の「核の傘」に安全保障を頼ることへの合理的な説明もないまま、鳩山氏は官邸を去った。

 昨年の政権交代とともに就任した岡田克也外相にも、多くの被爆者は期待を寄せた。党核軍縮促進議員連盟の会長を務め、一昨年8月には長崎市で東北アジア非核兵器地帯条約案を発表。核兵器の保有国に先制不使用宣言を求めることにも前向きだったからだ。

 確かに今年3月の主要国(G8)外相会合では「核兵器の役割の低減」を保有国に対して強く主張した。とはいえ先制不使用宣言については「個人的な持論」とするなど、外相就任以降、核兵器をめぐっては無難な公式発言が目立ったことは否めない。

 今月4日の記者会見。岡田外相は「非核地帯条約や先制不使用の問題はすぐに実現できない。その前に、核兵器の役割の低減や北朝鮮の核問題の解決がないと現実性がない」と述べた。

 一方の自民党。参院選マニフェストには「核軍縮分野で現実的かつ具体的な取り組みを進める」「わが国の核抑止政策について根本的な議論を開始し、基本方針を確立する」と盛り込んだ。

 そして新たに被爆国のリーダーを務める菅直人首相。今月15日の参院本会議代表質問でこう発言した。「唯一の被爆国として核兵器のない世界へ先頭に立ってリーダーシップを発揮したい」

 政治家の言葉は重いはずだ。それでも「核兵器廃絶」の発言が軽々しく聞こえるのは、その具体策が見えないからだ。廃絶の前提となる「核の傘」からの脱却、北東アジアの非核化にどう取り組むのか、言葉を裏付ける行動が見えてこないからだ。

 「生きているうちに核兵器廃絶を」との被爆者の願いに、被爆国政府はいったい、どう応えるのか。

(2010年6月19日朝刊掲載)

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