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連載・特集

『生きて』 日本被団協代表委員 坪井直さん <13> 後継世代

進む高齢化 将来を託す

 長女が中学生のころ、被爆2世であることに悩んだ時期があった

 中学校で受けた平和教育で、先生が「2世にも影響が出る」と言ったらしい。先生は医学者でもないのに、軽い気持ちで言ったんじゃろう。娘はひどく落ち込んだ。スポーツもするし、健康なんですよ。でも、早く死んでしまうんではないかと思ったらしいんです。

 わが子のことだから、余計につらかったですよ。「お父さんは原爆に遭って危篤状態になっても、こうして生きとる。生きようという気持ちがあったら、生きられる。心配するな」。そう励ましました。娘は少しずつ明るくなりました。

 理事長を務める広島県被団協の「被爆二世部会」は2011年、2世にアンケートをした。6割近くが、これまで健康に過ごせたと答えたものの、64・5%が将来の健康に対しては不安を感じていた

 遺伝的な影響があるかどうかは研究でもまだ明らかにされていないし、下手なことは言われん。じゃが、2世が抱えている不安は大きい。われわれも、戦後10年余り、被爆者への援護がなかった時代、不安の中を生きてきた。

 まずは、がん検診を加えてもらい、2世に対する健康診断の範囲を広げてもらえるような運動をして不安を取り除かなければなりません。1世として励ましてやらんといけんことも、たくさんある。アンケートは、もっと詳しい分析が必要だ。

 被爆者は年々、老いを重ねている。平均年齢は78歳を超えた

 県内各地を回ると、あちこちで被爆者の高齢化が進み、被団協の世話をする役員さんがおらんようになっていた。2世への継承を念頭に動かんといけんと思っています。「2世の皆さん、奮い立てよ! 後を頼むぞ」と言いたい。

 2世にお願いしたいのは、1世の話を今までより、もっと深く聞いてほしいということです。ただ、被爆者の気持ちを分かってくれえ、と思って一方的に話すと押し付けになってしまう。そうならんようにせんといかん。そして、核兵器廃絶に向けてスクラムを組み、一歩でも二歩でも前に進むようにしてほしい。

(2013年2月2日朝刊掲載)

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