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連載・特集

『生きて』 日本被団協代表委員 坪井直さん <15> 最期まで

命と平和の大切さ追求

 がんなどの病気やけがを「原爆症」と認めるよう申請したが、却下された被爆者らが、却下処分取り消しなどを求めた原爆症認定集団訴訟で、国は2006年以降、相次いで敗訴した。認定制度を見直すため、坪井さんも加わる検討会を10年12月から月1回のペースで開いている

 早くせんと被爆者は亡くなってしまう。見直された時に被爆者がおらんかったら誰のための見直しか。急がんといけん。判決が示したように、国は被爆者を救うべきだ。

 11年には、平和に貢献した個人や団体に贈られる谷本清平和賞を受賞した

 賞に値する人間か悩んだ。もらうために頑張っとるんじゃないという気持ちもあった。しかし、受賞は感謝以外にない。今まで通り、人さまのために尽くしていきたい。

 命を守るということを追求し、全うする。今、軍備拡大や核兵器保有を肯定するような声がある。もってのほかですよ。戦争になったら、親が子を弔う。そんな世の中が正常だと言えるのか。死ぬのは未来ある若者で、生き残るのは上に立つ者。戦争なんて下の下ですよ。

 核抑止力もそう。核兵器を持つことで世界の均衡を保とうなんて、絶対に被爆者が許さない。

 人の命が大事なんです。国境のない世界はユートピアかもしれんが、つくらんといけん。資源や領土の問題が起きた時は、武力ではなく粘り強く話し合いで解決する必要がある。そのためにも命の大切さを重んずる教育が必要だ。相手の気持ちが分かる人間を育てんといけません。

 ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大の山中伸弥教授のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の本はすぐに買った。体の悪い所を取り換えられるようになったら、もっと長生きできるかもしれん。将来は無限。あの世から家内が呼んどるかもしれんが、命ある限り平和街道を突き進む。どんなことがあっても諦めません。ネバーギブアップ。=おわり(この連載はヒロシマ平和メディアセンター・増田咲子が担当しました)

(2013年2月6日朝刊掲載)

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