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欧州連合 フェデリカ・モゲリーニ  外交安全保障上級代表 インタビュー全文

質問)広島へは何回来たことがありますか。過去に来られた方は、時期やその時の印象を教えて下さい。今回の広島訪問で何を経験したいですか。
回答)今回は、私にとって初めての、かつ待望の広島訪問となります。政治家になった当初より、核不拡散と核軍縮を目指し、行動してきました。貴市は、すべての大量破壊兵器の廃絶に向けた我々の日々の闘いにおいて、何が懸っているのかを思い起こさせる、最も強力な象徴です。私は毎年8月6日に、人類初の原爆とその後のいわゆる「恐怖の時代」の犠牲者・被害者に思いをはせる時間を取るようにしています。一度、被爆者の方々と会う機会がありましたが、一生忘れることのない経験となりました。彼らの証言は、核の誘惑を拒絶する最強の警告であり、彼らの物語を後世に残すことは極めて重要なことです。ですので、他のG7外相とともに広島平和記念碑を訪れることを心より待ち望んでいます。それは、我々全員、特に私自身の心を揺さぶり、さらなる奮起を促す瞬間になると確信しています。

質問)大臣が外相会合に期待することは何ですか。特に、国際平和に向けて議論したい課題や解決策はありますか。
回答)今回の会合は、世界の平和と安全にとって試練の時期に開催され、そこでは非常に徹底した議論が交わされると思います。議題は北朝鮮の脅威から中東での紛争、ウクライナ情勢から南シナ海での緊張まで広範にわたります。各テーマにおいて、世界の主要国は対立的なアプローチを避け、より強力な協調を目指すことが重要です。今日の安全保障は、ますます集団的に取り組まなければならないものになっています。日本はこのことをよく理解しており、欧州連合(EU)と日本の間の安全保障問題に関する協力は非常に良好です。しかしながら、すべてのG7メンバーがより積極的に世界平和に関与する余地がまだあると思います。我々の諸地域が不安定ですと、我々みなの安全保障や経済に悪影響を与えます。ここ数カ月、私自身も、例えばシリア内戦の終結に向けた政治的手続きや気候変動対策だけでなく、北朝鮮問題に対しても、協力強化に向けた、非常に勇気づけられる傾向を目の当たりにしてきています。この傾向はより強化・深化される必要がありますが、G7というのは、相互理解を向上し、共通の利益を表面化させるには非常に良い舞台だと思います。

質問)大臣は「核兵器なき世界」に賛同しますか。どうすれば実現できると思いますか。
回答)私は、核不拡散と核軍縮は生涯にわたって身を捧げる、私の世代に与えられた最重要課題の一つと考えています。我々は過去数十年間でようやく、核兵器は我々の安全を向上させず、実際にはむしろそれを劇的に弱体化させることに気付き始めました。このことは、特に平和に対する脅威がより分断化している時代においてはさらに真実として当てはまるのです。我々が昨年、イランの核計画に関して取りまとめた合意は、核不拡散を目指す闘いにおいて、転換期となる土台を築きました。さらに、北朝鮮に対する最新の国連安全保障理事会決議では、国際社会は核不拡散に対し前例のない結束を示しました。この勢いを維持し、さらに前進しなければなりません。核不拡散条約は、完全適用からほど遠い状態です。包括的核実験禁止条約はいよいよ施行されなければなりませんし、私自身、この目的を奨励し、支持する賢人グループの一員として、同グループを通じた取り組みに関与しています。大量破壊兵器が全くない中東という考えは、単なる夢想として一蹴されるべきではありません。我々は目標を高いところに定める義務があります。核のない世界は、勇気ある指導者と市民レベルの取り組みなしでは実現できません。

質問)次代を担う若者たちに、平和を進めるためにすべきことの提案はありますか。
回答)大胆であれ、勇敢であれ、と言いたいです。我々の文化の多くは、戦争をするには大変な勇気が必要だと教えます。しかし実際には、文化的・政治的相違を越えて手を差し伸べ、歴史的敵意を乗り越え、平和に向け協力して取り組むことの方が、はるかに勇気を要することです。理想主義者というレッテルを貼られることを恐れてはいけません。「それは不可能だ」という人々は、たいていは、あなた方がそれを実現させてしまうかもしれないことを恐れているだけです。そして、物事に関与することを恐れてはいけません。大人たちがあなたのために場所を空けることを待つ必要はありません。大人たちに「君たちは未来である」と言わせてはいけません。あなた方は「現在」なのです。それに、あなた方の平和に対する責任は明日始まるのではなく、まさに今、始まっているのです。このことは、全世界の若者にとって真実ですが、とりわけ広島の若い人たちにとって言えることでしょう。戦後、広島をここまで見事に復興させたのはまさにあなた方の両親や祖父母たちなのです。今度は、あなた方が自らのレガシーを残す番です。常に自身の過去を思い出し、決して他人があなた方の未来を創ることを待たないように――すべてはあなた方次第です。今日という日はあなた方の手中にあるのです。

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