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母を描き原爆朗読劇 8月 舟入高演劇部出身者ら

 原爆劇で知られる舟入高(広島市中区)演劇部の元部員たちでつくるグループが8月、朗読劇「蛍火」を上演する。リニューアル後の原爆資料館本館に展示された写真の被爆した少女、藤井幸子さん(1977年に42歳で死去)をモデルに創作。長男で同部出身の哲伸さん(59)=東京=が「母は奇跡的に生き延び、私が生まれた。被爆の恐ろしさを伝え続けたい」と発案した。聖歌隊を募っている。

 劇は10歳で被爆した主人公の葉子が戦後の広島を懸命に生き、45歳の時にがんで亡くなるまでを描く。生き残ったことに苦悩しながら、「ピカなんかに負けまあや」と語る夫、米国人カメラマンとの出会いを通じ、憎しみを乗り越えていく。クライマックスでは市民参加の聖歌隊が、峠三吉の詩「にんげんをかえせ」を「アメージング・グレース」にのせて歌う。

 写真の少女は、哲伸さんの申し出をきっかけに専門家の鑑定などで2017年に藤井さんと判明したという。昨年4月にリニューアルした資料館本館入り口にある。哲伸さんが昨夏に舞台化を呼び掛け、同部出身者や有志による制作委員会、出演者の計約20人で準備を進めている。元部員の久保田修司さん(62)=廿日市市=が脚本を担当する。

 出演メンバーたちが7日に市役所で会見し、哲伸さんは「母だと分かったことを含め、広島の人間として宿命を感じる。被爆者が生きる中で感じた苦しみと喜びを感じてほしい」と話した。久保田さんは「聖歌隊に家族で参加し、平和を考えるきっかけにしてほしい」と呼び掛けている。

 8月1日午後6時半から中区の広島国際会議場で上演し前売り券1500円(高校生以下800円)。当日券は2千円(同千円)。クラウドファンディングで上演資金も集めている。制作委員会☎080(4131)0866。(明知隼二)

(2020年2月12日朝刊掲載)

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