×

ニュース

同世代の被爆 伝える使命 盈進中高生ら証言集作成

 福山市千田町の盈進中・高のヒューマンライツ部の生徒と、広島県内の被爆者や研究者たちでつくる市民グループ「ノーモア・ヒバクシャ継承センター広島」(足立修一代表)は、被爆者の切明千枝子さん(90)=広島市安佐南区=の被爆証言集「切明千枝子 ヒロシマを生き抜いて」を2年ほどかけて作成した。(川村正治、金崎由美)

 比治山橋東詰め付近(現南区)で15歳の時に被爆した切明さんの体験を、同部の生徒が中心となり2017年9月から数回に分けて聞き取った。全身やけどの人に油を塗ってあげたこと、学生が火葬される様子を震えて見ていたこと、被爆後に髪の毛が抜けたり歯茎から出血したりした不安が鮮明に語られている。

 中高生になじみの薄い「荼毘(だび)に付す」「教育勅語」など94個の単語には注釈を付けた。原爆孤児の支援活動などに加わった戦後復興期の体験も記している。

 切明さんが被爆したのは、生徒たちと同世代だった頃。高3前原未来さん(18)は「年の近い1人の女性の人生を通して、原爆がいかに多くの人の命や幸せを奪ったのか、現実味を持って感じる」と振り返る。完成までに生徒25人ほどが関わった。同センターのメンバーによる聞き取りも加えて150ページにまとめた。

 労作を贈られた切明さんは「二度と戦争と原爆被害が繰り返されないよう、あの時の悲惨を伝えておかなければ、との願いを皆が受け止めてくれた。本当に感謝している」と喜ぶ。

 部長の高2馬屋原瑠美さん(17)は「本当は思い出したくない、という気持ちを抑えて切明さんが語り、託してくれたずしりと重いバトンを同世代や世界にも伝える使命が私たちにはある」と話す。本を英訳してインターネットで発信する計画も進めている。

 千円(送料別)。発送は3月下旬以降。県内の公立図書館に寄贈している。h.conveyrelay.c@gmail.com

(2020年2月25日朝刊掲載)

年別アーカイブ