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「実物重視」高い関心 原爆資料館 リニューアル1年 休館前は入館15%増

 原爆資料館(広島市中区)は25日、本館の大規模リニューアルから1年を迎える。これまで以上に遺品などの「実物重視」を打ち出した展示は国内外で高い関心を集め、2019年度の入館者数は過去最多の175万8746人を記録。米国による原爆投下の被害の実態を伝え、核兵器廃絶を訴えた。一方、現在は新型コロナウイルスの感染拡大で臨時休館が続き、異例の状況での節目となる。(明知隼二)

 リニューアル展示は、破壊された都市の状況をイメージしてもらう「8月6日の惨状」のほか、遺影や遺品を通して被爆者や遺族の苦しみに向き合う「魂の叫び」など、いずれも実物資料を軸とする4コーナーで構成する。複製を含む実物資料305点をはじめ、原爆の絵や写真など計539点を並べた。在韓被爆者たち外国人被爆者を紹介する一角も新たに設けた。

 19年6月に大阪市であった20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて、欧州連合(EU)のトゥスク大統領たち要人が相次いで訪れた。11月に平和記念公園(中区)を訪問したローマ教皇フランシスコが書き残したメッセージの展示も、あらためて注目を集める契機になった。

 今年2月29日には、新型コロナの感染拡大を防ぐとして臨時休館が始まった。19年度に開館した11カ月間の入館者数は、西日本豪雨の影響で落ち込みもあった18年度と比べて15・5%増加。リニューアル後の19年5月から今年1月までの月別は、20・1~51・2%増と大幅に伸びていた。

 臨時休館は修学旅行シーズンとも重なり、今月20日現在で被爆証言者や伝承者の講話などのキャンセルや延期は1008件に上る。市は当面、5月17日までとしているが、市内の感染者数は増え続けており、再開時期は見通しにくい。

 資料館は「臨時休館が長引いているのは残念だが、今は人命を最優先して対策をする時期だ。再開と休館延長の両方を見据えて準備をしていく」としている。

(2020年4月24日朝刊掲載)

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