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海外資料の活用 不可欠 朝鮮人被爆死 把握漏れ 実態解明 国に責任

 韓国の被爆者団体が蓄積している資料を付き合わせることで、朝鮮人の犠牲者の一部が広島市の「原爆被爆者動態調査」から抜け落ちているとみられることが分かった。いまだ明らかでない原爆犠牲者の「空白」を埋めるには、海外にある情報を取り入れ、活用することが不可欠だ。(小林可奈)

 今回、韓国原爆被害者協会と会員たちに加えて、広島市、市に委託され動態調査のデータ整理などをしている広島大原爆放射線医科学研究所の協力により、韓国側の資料と広島側のデータの照合ができた。同協会が所蔵する資料は、実に膨大。貴重な手掛かりはまだまだあるだろう。関係者が連携すれば、動態調査に活用する道は開けるはずだ。

 1945年末までに亡くなった原爆犠牲者は、市の推計値で「14万人±1万人」とされるが、市が実際に把握できているのは2019年3月末時点で8万9025人。日本が植民地支配していた朝鮮半島の出身者については、なおさら情報が乏しい。8万9025人に加わるべき死者が大勢、埋もれていることは確実だ。

 韓国の原爆被害者を救援する市民の会の市場淳子会長は「日本政府は自ら被害調査に努めないまま、1965年の日韓請求権協定によって被爆者の日本に対する賠償請求権の問題は『解決された』としている」と批判する。

 動態調査の実施主体は広島市だが、原爆被害の実態解明は本来、国が責任を持って行うべきことだ。理不尽な死を強いられたまま、日本側が忘れ去っている人たちを掘り起こすこと―。生き残って45年当時を記憶する現地の被爆者も、高齢化している。残された時間はそう長くない。

(2020年6月8日朝刊掲載)

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