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被服支廠 全棟保存を 中区 全国の戦跡保全事例紹介

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)の全棟保存に向けた方策を考える講演会が24日、原爆資料館(中区)であった。戦争の記憶を次代につなぐため、戦跡を保全している全国各地の事例が報告された。

 各地の市民団体でつくる「戦争遺跡保存全国ネットワーク」共同代表の出原恵三さん(64)=高知市=が講師を務めた。陸軍病院の壕(ごう)を町史跡として指定した沖縄県南風原町の取り組みや、弾薬庫と講堂が残る高知市の旧陸軍連隊跡地の購入を高知県に働き掛けている市民運動を紹介した。

 被服支廠については「旧日本軍の施設だけに、加害の歴史も伝わって貴重だ。全棟を国史跡とし、原爆ドームに続く世界遺産への追加指定を目指そう」と呼び掛けた。自民党の議連が国に今月提示した、県所有の3棟を約30億円かけて保存する案の説明もあった。

 国保有の1棟を含む4棟の全棟保存を目指している「旧被服支廠の保全を願う懇談会」が開き、約140人が聞いた。中西巌代表(90)=呉市=は「険しい道だが、これからが正念場。あらためて戦争遺跡の大切さを学んだ」と話した。(山本祐司)

(2020年7月25日朝刊掲載)

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