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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] オバマ宣言 有名無実 核戦力近代化 米で加速

 人けのない雪景色の大豆畑を訪れたのは、米国のバラク・オバマ大統領の就任式を翌月に控えた2008年12月だった。昨年、この地を再訪すると風景は一変していた。

 真新しい、近代的な建物だ。「核弾頭の工場よ。オバマ大統領なら建設を中止してくれるかも、とわずかな望みをつないだのに」。米中西部ミズーリ州のカンザスシティー郊外で、再び案内役をかって出てくれた地元の平和活動家アン・サレントロップさん(63)が怒りをあらわにした。

 核弾頭の維持管理の一端を担う。建設費は日本円で817億円。核弾頭の部品の調達や製造をしている。当然ながら今後数十年間は稼働する前提である。

 しかもそれは、オバマ政権の現実の核政策を象徴する「氷山の一角」でしかない。巨費を投じた核戦力や核インフラの近代化が全米で急加速している。核軍縮に関心を寄せる米国内の市民や専門家の間で、批判と失望が交錯している。

 チェコ・プラハを訪れたオバマ大統領が大群衆を前に「核兵器なき世界」を目指すと宣言して約6年。この核超大国は、被爆地と国際社会に背を向け続け、姿勢を変えていないように見える。(金崎由美)

(2015年2月14日朝刊掲載)