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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] 核にどう向き合う 廃絶・抑止力 使い分け

 口調に怒りがにじんでいた。「核爆発が起きても臨機応変に対応できる、と言うんですか。あまりに非現実的だと思います」。先月上旬、オーストリア政府が首都ウィーンで開いた第3回「核兵器の非人道性に関する国際会議」の討議終了後。カナダから招かれた被爆者サーロー節子さん(83)が、日本の佐野利男軍縮大使に詰め寄った。

 問いただしたのは、政府代表団長として発言した佐野氏の真意だ。核爆発が起きれば、誰も十分な救援などできないとの指摘が相次ぐ中、佐野氏は「少し悲観的だ」と反論。救援能力を高める研究を提言した。発言後の取材に「(被爆地に)裸で入れば被曝(ひばく)するが、例えば防護服を着たりもできる」とも語った。

 核抑止力による安全保障を前提に、核兵器の影響を過小評価したともとれる発言。反発したのは被爆者だけではない。オーストリア政府の担当者も「国際社会は賛同しないだろう」と冷ややかだった。被爆国として核兵器廃絶を主導する役割を期待されながら、今なお核抑止の発想から抜け出ようとしない日本。そのスタンスが問われている。(田中美千子)

(2015年1月19日朝刊掲載)