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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] 被爆者9割が風化心配 本社全国アンケート 平和教育の活発化訴え

 全国の被爆者の約9割が、今後の被爆体験の継承について風化を懸念している実態が、中国新聞社が行った被爆70年のアンケートで分かった。7割強がさまざまな形で体験を伝える努力を重ね、現時点では6割近くが一定の継承はできていると考えている。しかし、近い将来には一転、危機感を強める。多くの被爆者が平和教育の活発化などを急務と訴えた。(杉本貢、道面雅量)

 アンケートは昨年9月中旬から11月中旬にかけ、日本被団協の都道府県組織などの協力を得て行った。広島県内の1226人をはじめ、計3273人に発送し、半数近い1526人から郵送で回答を得た。

 「被爆体験の継承はこれからどうなるか」との問いに、「次の世代が継承してくれるので心配ない」と回答した人は、わずか3・6%。「継承してくれると思うが、十分に伝わるか心配だ」が53・7%と最も多く、「だんだんに忘れられていく」が33・8%、「急速に忘れられていく」も1・6%あった。

 体験継承のための被爆者自身の取り組みは積極的だった。74・4%が何らかの継承活動をしたと回答。その中身(複数回答)では「家庭で子や孫に話した」が70・0%に上ったほか、「体験を手記に書いた」「被爆者運動や平和運動の集会で証言した」「学校で語ったり、修学旅行生に話したりした」が続いた。

 現時点で「体験が継承できているか」との問いには、「できている」「ある程度できている」と答えた人が計58・7%いた。だが、被爆者健康手帳を持つ被爆者の平均年齢は2014年3月末で79・44歳。今後、高齢化が極まり、体験を直接伝える機会が減っていくことへの懸念の強さが浮き彫りになった。

 継承のための取り組み(複数回答)では、45・7%が「広島・長崎への修学旅行をはじめ、平和教育を活発にする」に期待。続いて「被爆2世や3世への伝承」「次世代の語り部やガイドの育成」に希望を託す人が多かった。

(2015年1月1日朝刊掲載)