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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年へ] 米研究所 Zマシン公開 核兵器の性能実験装置 抑止力目的を強調

 米ニューメキシコ州にあるサンディア国立研究所が今月、核兵器の性能実験を行う装置「Zマシン」を中国新聞に公開した。被爆地のメディアとして初めて、核兵器の維持管理に欠かせない世界最先端の実験施設に入った。担当者は「核抑止力を維持するための施設」とし、同盟国である日本への貢献にもなっていると強調した。

 Zマシンは電気を瞬間的に圧縮して巨大エネルギーを発生させ、世界で最も強力なエックス線を放射させることができる実験装置。超高温、超高圧の核爆発に近い環境下で、爆発や臨界を起こさずにごく少量のプルトニウムの状態を確認する。物質が経年劣化によりどう反応するかなどをみている。

 同研究所を管轄する米エネルギー省傘下の国家核安全保障局が1985年に前身となる施設を開設した。現在の装置に全面改良されたのは2007年。保有核の管理計画(SSP)として行っている核兵器の性能維持措置の一環である。

 同局はネバダ核実験場の地下施設で行う臨界前核実験をはじめ、SSPに基づく13種類の実験の実施状況を年4回、事後公表している。「核兵器なき世界を追求する」と09年にプラハで演説したオバマ大統領の政権下では、すでにZマシンによるプルトニウム実験を12回、臨界前核実験を4回しており、広島や長崎から抗議の声が上がっている。

 最近では9、10月に計2回、Zマシンでの実験が行われていたことが11月初めに明らかになった。これを受けて松井一実広島市長は同4日、東京の米国大使館を通して大統領あてに抗議文を送付。「今後も核兵器を持ち続ける意志を表したものであり、断じて許すことはできない」などと批判した。被爆者団体や反核団体は原爆慰霊碑(広島市中区)前で同3、5日に座り込んだ。

 同研究所の幹部は抗議文について「毎回読んではいないが広島の懸念は認識している」。被爆地でZマシンのプルトニウム実験に対し、座り込みなどの抗議が起きていることについては「日本を含む同盟国に対し核抑止力を保証する責任がある」と話した。

 一方、米国の「核の傘」に安全保障を頼る日本政府。菅義偉官房長官は13年3月にZマシンでのプルトニウム実験が明らかになった際の記者会見で、「実験は貯蔵している核兵器の安全性や有効性を維持、評価するためと承知している。核爆発を伴わず、(日本政府として)抗議は考えていない」と述べた。(金崎由美)

(2014年12月22日朝刊掲載)