×

連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] 原爆は「善」か…米首都で再考 20年ぶり展示会

 「地獄のようでした」。広島で被爆した山本定男さん(84)=広島市東区=は13日、米国の首都ワシントンにあるアメリカン大で、70年前に見た光景をそう表現した。広島、長崎両市と同大が主催し、同日始まった「ヒロシマ・ナガサキ原爆展」の関連行事。核超大国の政治行政の中心地で、市民らに核兵器の非人道性を伝えた。

 会場には、8時15分で止まった懐中時計などの被爆資料、写真パネルが並ぶ。故丸木位里、俊夫妻が描いた連作「原爆の図」も併せて展示された。「原爆の図丸木美術館」(埼玉県東松山市)所蔵の全15点のうち6点。今回、ワシントンには初めて持ち込まれた。

 同大で原爆展が開かれるのは1995年以来、20年ぶり。この年、同じワシントンにあるスミソニアン航空宇宙博物館で計画された被爆資料の展示は、米退役軍人たちの反発で中止になった。中止をめぐる論争の最中に、同大はあえて原爆展を開いたのだった。

 「原爆は戦争を早く終わらせた善なるものという米国内の定説を、再考する必要がある。そしてその意義は今も変わらない」。前回、今回ともに原爆展の開催を主導した同大のピーター・カズニック教授は指摘し、こう続けた。「20年を経ても米国の世論はあまり変わっていないから」(山本慶一朗)

(2015年6月20日朝刊掲載)