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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] プルトニウムなぜ必要 「夢の燃料」既に原爆6000発分

 長崎原爆の材料となった核物質プルトニウム。青森県六ケ所村で来春、原子力発電所の使用済み燃料からプルトニウムを「資源」として取り出す再処理工場が稼働しようとしている。再処理を柱とした核燃料サイクル施設の立地決定から30年。「なぜプルトニウムが必要なのか」。疑問と不安を抱え、地元では反対運動が続く。

 静かな口調に憤りがにじんだ。「原子力施設がテロに遭わない保証はない。再処理工場は存在そのものを許してはならない」。国に再処理事業の許可取り消しを求めた行政訴訟で、3月初旬に青森地裁(青森市)で開かれた口頭弁論。浅石紘爾(こうじ)弁護士(74)は、2001年9月の米中枢同時テロなどを例に指摘し、プルトニウムが奪われる可能性も強調した。

 浅石弁護士が代表を務める核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団は、1988年から計画撤回を求めて裁判を続ける。プルトニウムを持続的に再利用できる「夢の燃料」にするはずの高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)は稼働のめどが立たない。だが、国はサイクル政策の旗を降ろさず、青森県、六ケ所村も推進の立場を変えない。

 原告団の海渡雄一弁護士(59)は「燃料化の見通しとは別に、国としてプルトニウムを持ちたい思惑が働くのか」とも感じる。日本が国内外で保有するプルトニウムは既に47トン。長崎原爆に換算して6千発分近くに及ぶ。「核兵器廃絶を訴える被爆国が、なぜ増やし続けるのか」。国際社会も厳しい目を向け始めている。(山本洋子)

(2015年3月28日朝刊掲載)