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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] 被曝 南の島の叫び マーシャル代表が集会で訴え

 「米国は全人類の幸福のためと言って、私たちの土地で核実験を強行した」。中部太平洋のマーシャル諸島から島民を代表して来日したピーター・アンジャインさん(42)は1日、静岡県焼津市での「ビキニデー」集会で約2千人に向かって訴えた。

 1946~58年、マーシャル諸島では67回の原水爆実験が繰り返された。特に54年3月1日、ビキニ環礁での水爆実験「ブラボー」は、爆発力が広島原爆の約千倍の15メガトン。大量の放射性降下物「死の灰」をまき散らし、焼津港所属のマグロ漁船第五福竜丸の乗組員たちも被曝(ひばく)した。

 アンジャインさんは、島民86人が被曝したロンゲラップ環礁出身。親族たちを脱毛や下痢などの急性症状が襲った。米国の安全宣言で3年後に帰島した後も、甲状腺障害や流産、死産が相次ぎ結局、全員が島を離れた。「これが全人類の幸福なのか」と悔しさをにじませる。

 マーシャル諸島政府は昨年4月、核兵器保有国が国際法上の核軍縮義務に違反しているとしてオランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。

 「私たちでなければ、誰がやるのか。今でなければ、いつやるのか」。アンジャインさんは拳を振り上げた。小さな島国からの叫びが、被爆国日本を突き刺すように響いた。(藤村潤平)

(2015年3月14日朝刊掲載)