×

連載・特集

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <6>

 私が俳句の世界に入ったのは56年前、会社の上司に勧められたのがきっかけだった。勤務していた会社は当時、福利厚生が充実していて、同好会で俳句をはじめ、書道や生け花、茶道、囲碁など何でも習うことができた。季語集や歳時記を買い、通勤のバスの中で夢中になって覚えていた。

 俳句と一緒に習っていた茶道の稽古の時に、「お菓子のご名は?」「霜月でございます」「お茶杓(ちゃしゃく)のご名は?」「残菊でございます」というように、季語集で覚えた言葉をすらすら答えることができた。先生から「良い言葉が言えましたね」と褒められて、いよいよ俳句に熱が入って季語の大切さを学んだ。

 俳句は外国人の間でも盛んになっているようだ。近年の俳句ブームは、テレビ番組の影響が大きいと思う。ある番組では選者の歯に衣を着せない講評が、作者や読み手に分かりやすい。添削してなるほどと理解できる爽快感が若い人の共感を呼んでいるのだろう。「俳句は年配の人のするもの」と遠ざけていた人たちも、これぐらいなら自分にもできると思ってもらえたら大成功なのではないか。

 五七五のたった17文字の中に感動を込められるか。未知の世界観を広げていけるか。詠み込むって難しいと思いながら、それが成功した時の達成感は何ともいえない。

 初めて句会で特選をいただいた感動から50余年。お互いに遠慮なく意見が言えるような、疑問をぶつけ合えるような、そんな句会を営んでいきたい。(広島俳句協会事務局長=広島市)

(2020年11月17日朝刊掲載)

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <1>

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <2>

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <3> 

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <4>

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <5>

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <7>

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <8>

年別アーカイブ