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核廃絶への思い継ぐ 坪井さんしのびお別れ会 教え子や若い世代も

 10月に96歳で亡くなった県被団協の前理事長、坪井直さんのお別れ会が22日、原爆資料館(広島市中区)で営まれた。核兵器廃絶を訴える運動を引っ張り、「ネバーギブアップ」が信条だった坪井さん。参列者はその人柄をしのび、廃絶への思いを強くした。(余村泰樹、小林可奈)

 坪井さんと一緒に米ニューヨークの反核パレードで先頭に立つなど、県被団協の副理事長として苦楽を共にした池田精子さん(89)=安芸区=は車いすで参列した。「平和活動に一生懸命だった。一緒に頑張ってきた人が少しずつ減り、寂しい」と残念がった。

 付き添った孫の佳世さん(45)は「祖母とともに闘ってきた坪井さんは身内のような存在。一緒に活動したことを忘れたくない」。自身は市の被爆体験伝承者でもある。「強いリーダーシップを持つ唯一無二の人を失ったが小さな力を少しずつ合わせたい」と話した。

 中学教員時代に被爆体験を語り「ピカドン先生」とも呼ばれた坪井さん。会場には教え子も多く訪れた。村上美鈴さん(77)=南区=は「心が広い先生だった。親と同じくらい大事な存在で、心に穴が開いたよう」と涙を流した。

 坪井さんの遺志は若い世代にも受け継がれている。盈進高(福山市)に在学中、坪井さんの証言を聞いた会社員橋本瀬奈さん(23)=同市=は「坪井さんが語ってくださった被爆の実態と平和への願いを忘れず、次世代に伝える」。同高2年の塩川愛さん(16)=同市=は「坪井さんが繰り返した『ネバーギブアップ』の言葉は私たちを後押ししてくれる。憎しみを乗り越えて平和な世界を築こうとした坪井さんの思いを引き継ぎたい」と誓った。

 坪井さんは5年前、米国の現職大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏と平和記念公園で面会した。一緒に出迎えた森重昭さん(84)=西区=は「世界平和のために私心なく活動してきた。だからこそ敵をつくらず、たくさんの人が付いてきた」と振り返った。

(2021年12月23日朝刊掲載)

核廃絶の志継承 生前の笑顔に決意新た 原爆資料館で坪井さんに別れ

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