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ロケ地広島に輝き 「ドライブ」アカデミー賞 「モノクロ」の印象覆す 撮影・観光 追い風期待

 広島を舞台に撮影した映画「ドライブ・マイ・カー」が27日(日本時間28日)、日本映画としては13年ぶりとなる米アカデミー賞国際長編映画賞に輝いた。緑豊かな平和都市の街並み、風光明媚(めいび)な瀬戸内の海が、スクリーンを通じ歴代受賞作の一つに刻まれることになった。今後のロケ誘致や観光振興に地元の期待も膨らむ。(木原由維、里田明美)

 「映画のおかげで復興した美しい広島を知ってもらえる」。「ドライブ―」のロケを誘致した広島フィルム・コミッション(FC)の西崎智子さん(56)は、撮影地の一つとなったグランドプリンスホテル広島(広島市南区)で中継を見守り、歓喜の声を上げた。

 これまで海外の映画監督たちの間で根強かった「モノクロの廃虚」という広島の映像イメージを覆したのが「ドライブ―」だった。映画は穏やかな海辺やきらめく木漏れ日を映し出す。西崎さんは「平和都市であるとともに、他に代え難い景観美を生かしたことが素晴らしい」と涙を浮かべた。

 市民団体「アーキウォーク広島」代表の高田真さん(43)は、重要な場面に登場するごみ焼却施設、中工場(中区)に着目。「世界に類を見ない美術館のようなデザイン。唯一無二の魅力を世界に発信した」。警察官役で出演した俳優深海哲哉さん(45)=安佐北区=も「映画は広島でしかできない表現があると証明した」と力を込めた。

 コロナ禍にあえいできた飲食店や観光地には明るいニュースとなった。広島市中心部のバー「BAR CEDAR(シダー)」代表の陶山秀次さん(41)は「受賞は何よりの追い風になる」と喜ぶ。広島県観光連盟の山辺昌太郎チーフプロデューサー(52)も「ロケ地を回る『聖地巡礼』に世界中の人々が訪れるはず。広島観光の周遊性アップに向け、大きな突破口になる」と期待する。

 すでにリーガロイヤルホテル広島(中区)は、タクシー会社「つばめ交通」(東区)と協力し、ハイヤーでロケ地を巡る観光コースを販売している。湯崎英彦広島県知事は「鑑賞いただいた皆さま方に、映画の場面と重ね合わせながら、癒やしや感動を体感いただくことを期待しています」、松井一実広島市長は「広島広域都市圏内の魅力を世界に発信していただいたことに感謝しています」とコメントした。

広島に「助けられた」 濱口監督が感謝

 「風景の力に映画が助けられた」―。濱口竜介監督は米ロサンゼルスで開かれたアカデミー賞受賞後の27日の記者会見で、映画「ドライブ・マイ・カー」のロケ地となった広島県への感謝の思いを語った。

 平和記念公園など広島市のほか、呉市の大崎下島などで撮影。濱口さんは「奇跡みたいな風景と光線。土地の魅力を記録して、そのまま映画の力にできたのではないか」と振り返った。

 同席した主演の西島秀俊さんは、海外の人から「美しい風景だった。その中での演技が心に響いた」と褒められたことを明かし、ロケ地の関係者に「コロナで大変な中、素晴らしい場所を提供してくださり、おかげさまで素晴らしい映画になりました」と謝意を示した。

(2022年3月29日朝刊掲載)

「ドライブ・マイ・カー」アカデミー賞国際長編賞 広島の街角 快挙に沸く

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