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「ドライブ・マイ・カー」アカデミー賞国際長編賞 広島の街角 快挙に沸く

映画館 一報に拍手/書店 原作本PR

 広島が撮影の舞台となった濱口竜介監督の映画「ドライブ・マイ・カー」が米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した28日(日本時間)、広島の映画ファンたちは歓喜に沸いた。県内で濱口監督の作品の上映会を開いてきた関係者たちも喜びをかみしめた。書店に原作を収めた本のPRコーナーも登場するなど、広島市内は祝福ムードに包まれた。(高本友子、新本恭子)

 広島市中区の映画館「八丁座」では受賞の決まった午前中もこの作品を上映。エンドロールの後に従業員が観客に受賞の一報を伝えると、シアター内は拍手に包まれた。観客の同区の大竹利枝子さん(69)は「広島の景色が美しい。世界の人に見てもらえるのがうれしい」と喜ぶ。受賞のニュースを聞き、午後の回を鑑賞に来た呉市の会社員長尾博さん(60)も「感動した。受賞は納得」と話した。

 八丁座を運営する序破急の蔵本健太郎支配人(44)は「地元で撮られた作品を上映中に、快挙の報告が聞けるのは支配人冥利(みょうり)に尽きる」と感激する。新型コロナウイルスの影響で客が減る中でも、同作は連日人気だったといい「受賞を機に映画館に人が戻れば」と願った。

 ドライブ・マイ・カーは作家村上春樹さんの短編小説が原作。南区のジュンク堂書店広島駅前店は受賞発表後すぐに作品が収録された文庫本「女のいない男たち」約10冊をレジ前の話題書コーナーに並べた。店員の三浦明子さん(45)は「広島に住む人は映画を見てからだとイメージを膨らませて読書も楽しめるはず。原作にも関心が高まればうれしい」と期待した。

 濱口監督ゆかりの人たちも快挙を祝福した。10年来の友人の広島経済大の阿部純准教授(39)は福山大に勤務していた2013、19年、濱口監督を福山市に呼び、映画論の授業や上映会を開いた。アカデミー賞のノミネート後には「広島には思い入れができた」と連絡が来たという。「うれしい。また広島に呼ぶことができたら」と話す。

 福山大2年の時に授業で濱口監督から自作映画の講評を受けた会社員波多春奈さん(23)=甲府市=は「学生の映像を繰り返し見て、具体的に講評してくれた。本当に光栄な経験だった。今後の作品も楽しみ」と話していた。

(2022年3月29日朝刊掲載)

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