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日露関係 転換へ決断必要 岸田首相インタビュー詳報

 岸田文雄首相(広島1区)は就任半年を翌日に控えた3日、公邸で中国新聞のインタビューに答え、新型コロナウイルス対策や核兵器廃絶、「政治とカネ」問題などについて話した。(下久保聖司)

コロナ バランス腐心

就任半年

 ―就任半年を振り返り、どのような心境ですか。
 コロナ対策とウクライナ問題の二つが大きい。あっという間の半年だ。政権発足直後、衆院解散・総選挙で与党は絶対安定多数を得た。それを基盤にコロナ対策の全体像を示し、史上最大規模の経済対策を打つことからスタートした。

 年明けに、新型コロナのオミクロン株が広がった。医療提供体制、ワクチン、検査、治療薬。これらを着実に稼働させながら、経済を動かすようにしている。

 コロナ禍も3年目。国民の意識や社会の空気も変わった。政治に対し、体制は万全を期してほしいが、社会を動かしてもらわねば困るとの雰囲気がある。このバランスに腐心している。感染症は自然との闘いだから状況はどんどん変化する。専門家の判断も変わる。毎日、反射神経よく判断しないと付いていけない。政治の決断は重いとあらためて感じる。何が国民のためにベストかを念頭に走り続けている。

国際機運盛り上げる

核兵器廃絶

 ―ロシアがウクライナに軍事侵攻しました。
 日本はどう向き合うか。大きな課題として突き付けられた。力による一方的な現状変更は許されない。国際社会と連携し毅然(きぜん)とした対策を取る。ロシアから平和条約交渉の中断が宣告されたが、ひるむことはない。日ロ関係は前と同じようには考えられない。大きな転換を決断しなければいけない。

 ―ロシアのプーチン大統領が核兵器使用を示唆し、世界が反発しています。
 核兵器が使用されるかもしれないという具体的な可能性が出てきた。深刻な事態だ。もちろん使用も威嚇もあってはならない。「核兵器のない世界」への道のりが厳しいことを痛感した。

 国際的な機運をいま一度盛り上げねばならない。包括的核実験禁止条約(CTBT)や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)など、これまでの国際社会の取り組みが忘れられていることが気掛かりだ。

 まずは8月に予定されている核拡散防止条約(NPT)再検討会議だ。私は核兵器の数や役割、保有する動機をそれぞれ低減させる三つの具体策を提言してきた。日本とオーストラリアなど非保有国でつくる「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」など、今までわが国が取り組んできたさまざまな枠組みを使って機運を盛り上げたい。

 ―日本でも米国との「核共有」を議論すべきだと一部政治家が提起しました。どう受け止めましたか。
 非核三原則、あるいは原子力基本法をはじめとする原子力の平和利用を基本とする法体系から認められない。世論調査でも「議論はしてもいいのでは」という声は多いが、「結論として核共有には反対だ」との意見が圧倒的だ。国民の声に丁寧に耳を傾け、核兵器のない世界に向けて努力していく。

 ―NPT再検討会議に出席する考えはありますか。
 何も決まっていない。外相時代の2015年の会合で演説したが、これまで日本の首相の出席はなかったはずだから、よく考える。もちろん出席の可能性も含めてしっかり調整したい。

権力集中や惰性防ぐ

政治改革

 ―地元広島では2019年参院選で大規模買収事件が起きました。自民党改革はどうなっていますか。
 「政治とカネ」の問題については、広島でも引き続き司法の動きなどがあり、全国各地でも同じような事件が指摘されている。説明責任を果たし、けじめをつけていくことが大事だ。

 そもそも自民党の体質みたいなものが国民から指摘されている。私は昨年の総裁選で党改革を約束し、3月の党大会でも了承をいただいた。党内の権力の集中や惰性を防ぐ意味からも役員任期を厳格化し、党のガバナンス・コード(統治原則)を整理する。信頼される近代政党としての在り方を示し、信頼を回復する。

 ―夏の参院選に向けては。
 コロナ禍やウクライナ情勢、経済再生など大きな課題に対応するには、政治の安定が不可欠だ。参院選で与党として勝利を得たい。

一日も早く予算執行

経済対策

 ―コロナ対策や物価高の対応を聞かせてください。
 先日、107兆円を超える史上最大規模の22年度予算を成立させた。この中にいろんな対策を盛り込んだ。一日も早く執行し、国民の皆さんに届けることが何よりの経済対策だ。

 ウクライナ情勢の変化で原油や原材料の値段が上がっている。国民生活や社会を守るため、既にさまざまな対策を講じている。それに加え、4月末を期限に緊急経済対策をまとめる。これを22年度予算の執行効果に上乗せして急速な変化にも対応する。その上で6月までに「新しい資本主義」の実行計画を取りまとめたい。

(2022年4月4日朝刊掲載)

「核なき世界」実現強調 岸田政権半年 党改革にも意欲 中国新聞インタビュー

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