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米が臨界前実験【解説】「将来にわたる保持」前提

 バイデン米政権が昨年6月と9月に核爆発を伴わない臨界前核実験を2回実施していたことが12日、分かった。

米国がバイデン政権でも臨界前核実験を行っていることは、将来にわたる核戦力保持が前提であるからにほかならない。核兵器廃絶は最も緊急的な課題、と訴える被爆地との間の隔たりがあらためて浮き彫りになった。

 「核兵器なき世界」を唱えたオバマ政権も臨界前核実験を繰り返した。かつて千回以上の核爆発実験を重ねた末、核物質の挙動に関する最新データを集積しながら核弾頭を「近代化」させることは事実上の新型核開発に近いとの批判がある。

 しかし、爆発を伴う核実験は阻止しようと核軍縮に熱心な側も容認しがちなのが米国の現実だ。米エネルギー省核安全保障局(NNSA)は2023会計年度の予算要求などで、必要な施設や人材育成などの強化計画を進めると強調する。

 爆発を伴わない臨界前核実験は、包括的核実験禁止条約(CTBT、未発効)の禁止対象外。この抜け穴をふさいだのが核兵器禁止条約だった。6月に第1回締約国会議が予定される。ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が核兵器使用の威嚇という暴挙に出る中、臨界前核実験が核軍拡競争をあおる行動として一部の締約国の反発を招くだろう。

 バイデン大統領は11日、5月下旬に訪日するとの見通しを示した。3月に広島を訪れたエマニュエル駐日米大使は、大統領の来日時に「広島、長崎のどちらかには行かせていただきたいと言うと思う」と語った。被爆地で行動を伴う発言をするのか注目したい。

 同時に、核兵器の維持は「同盟国に核抑止力を提供するため」とする米国の臨界前核実験を日本政府が頑として批判していないことにも留意すべきだ。(金崎由美)

(2022年4月13日朝刊掲載)

被爆者らに憤り 遠のく軍縮に失望 広島訪れ声聞いて

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