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被爆者らに憤り 遠のく軍縮に失望 広島訪れ声聞いて

 バイデン米政権が昨年、2回の臨界前核実験をしていたことが明らかになった12日、広島の被爆者や平和運動の関係者には憤りと落胆の声が広がった。「核兵器のない世界」を掲げたオバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏に、あらためて核軍縮をけん引するよう求めた。

 「けしからん。怒り心頭だ」。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(80)は、小型核開発などを進めたトランプ前政権からの交代を経て、なお核実験を続ける核超大国の姿勢に憤慨した。ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領による核兵器使用を示唆する発言も踏まえ「世界を核兵器廃絶に向かわせるため、バイデン氏は核軍縮を率先する役割に注力すべきだ」と力を込めた。

 オバマ政権の理念を引き継ぐとされたバイデン氏。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は「期待していた核軍縮の進展を遠のかせる行為だ」と失望をあらわにした。「核実験にはいかなる場合も断固反対だ。核開発ではなく廃絶に向けた行動を」と求めた。

 非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員(53)は「爆発を伴わない実験なら可能だというのが米国の理屈。核開発そのものを禁止する方向に進まないと、北朝鮮を含む他国の開発も止められない」とし、開発や実験を広く禁じる核兵器禁止条約の重要性をあらためて強調した。

 バイデン氏は来月にも来日する可能性があり、広島訪問を求める動きもある。元原爆資料館長で被爆者の原田浩さん(82)は「オバマ氏が広島を訪れたが、米国は今も変わっていないということだ。バイデン氏は広島を訪れるなら、被爆者の声を聞いて心に刻み、核兵器廃絶に向けた行動を示してほしい」と注文した。 (明知隼二、小林可奈)

(2022年4月13日朝刊掲載)

米が臨界前実験【解説】「将来にわたる保持」前提

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