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家族伝承 説明会始まる 広島市新制度 被爆体験を代弁

 家族の被爆体験を聞き取って代わりに伝える広島市の「家族伝承者」の説明会が11日、原爆資料館(中区)であった。被爆者の高齢化で体験を証言できる人が少なくなる中、市が2022年度に新たに設けた制度。被爆者の証言を第三者が受け継いで語る従来の「被爆体験伝承者」に加え、家族の協力を得ることで新たな被爆体験の掘り起こしと継承につなげる。

 家族伝承者は、被爆者の子や孫たち親戚関係にある人が対象。存命の被爆した家族がおり、体験を聞き取ったり、話す原稿の内容を確認したりできることが条件となる。おおむね5年以上の活動を求めている。応募者は原則2年間の研修を受けて原爆被害の知識や話法を学び、講話の実習をした後、原爆資料館などで活動する。

 この日の説明会には応募を検討している市内外の20人が参加し、市の担当者から応募や研修の日程などを聞いた。

 厚生労働省によると、被爆者健康手帳所持者の21年の平均年齢は83・94歳(3月末時点)で、過去最高だった。人数は12万7755人となり、初めて13万人を下回った。21年には広島県被団協前理事長の坪井直さん=当時(96)=や、伝承者の講師も務めた岡田恵美子さん=当時(84)=が死去し、証言活動に尽力してきた人が相次いで亡くなっている。市平和推進課は「被爆の実態を後世に伝える取り組みを加速する必要がある」と説明している。

 制度への応募には説明会への参加が必要となる。この日の説明会は全4回の初回。残りの日程は、13日午後2時、15日午前10時、21日午前10時からで、会場はいずれも原爆資料館となっている。(明知隼二)

(2022年5月12日朝刊掲載)

家族の被爆 伝えねば 引き継ぐ責任 思い強く

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