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核禁条約会議 不参加 首相、保有国含む議論優先

 岸田文雄首相(広島1区)は15日の記者会見で、オーストリア・ウィーンで21~23日に開かれる核兵器禁止条約の第1回締約国会議について「出席を考えていない」と述べた。ライフワークとする「核兵器のない世界」の実現に向けた思いも一方では強調し、禁止条約に背を向ける米国など核兵器保有国を交えた議論を優先すべきだとした。

 締約国会議は、核兵器を持たない国々が主導して昨年1月に発効した禁止条約について議論を深め、賛同を広げる手だてを探る初の国際会議となる。広島、長崎の被爆者を中心に、ロシアによるウクライナへの核威嚇を踏まえ、少なくともオブザーバー参加して被爆の惨禍を発信するよう求める声が上がっていた。

 首相は会見で、核兵器禁止条約について「核兵器のない世界を目指す上で出口にあたる大変重要な条約」と改めて意義を認めた。その上で、現状では核保有国が「一カ国も参加していない」と説明。核抑止力を含めた安全保障を頼る米国との信頼関係を重視しながら「現実的な核軍縮・不拡散の取り組みを進めていくところから始めるべきだ」と訴えた。

 「将来は禁止条約に核兵器保有国を結び付けられるような世界を実現したい」とも述べ、核兵器保有国とともに参加を目指す姿勢を示した。首相は外相時代から、被爆国として保有国と非保有国との「橋渡し」に尽くすと唱えてきた。

 締約国会議を巡っては、日本と同じく米国の「核の傘」の下にある国々では、ドイツやノルウェーなどがオブザーバー参加する。

 政府は締約国会議前日の20日にオーストリア政府がウィーンで主催する「核兵器の非人道性に関する国際会議」には、被爆者3人を含む代表団を派遣する。(樋口浩二)

(2022年6月16日朝刊掲載)

被爆者失望「なぜ」 核禁条約会議不参加

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