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核兵器廃絶 一刻も早く 非人道性会議で被爆者 「絶対悪」ウィーンから訴え

 オーストリア・ウィーンで20日、「核兵器の非人道性に関する国際会議」が開かれた。核兵器禁止条約の第1回締約国会議(21~23日)を前に、オーストリア政府が主催した。日本の被爆者たちが惨禍を証言し、各国の政府代表や核軍縮の専門家たちが人体や環境に大きな影響をもたらす核兵器の非人道性を確認した。(小林可奈 ウィーン発)

 日本政府の代表団として、日本被団協の木戸季市事務局長(82)と家島昌志代表理事(80)、「核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会」の朝長万左男委員長(79)の3人の被爆者たち5人が参加。広島市の松井一実市長、長崎市の田上富久市長も出席した。

 5歳の時に長崎で被爆した木戸事務局長が「爆心地に近づくにつれ、私が見たものは、ごろごろと転がった死体、『水を水を』と、求める人々の姿でした」などと77年前の体験を説明。「原爆は非人道的絶対悪」と、一刻も早く廃絶すべきだと訴えた。

 長崎市出身で核兵器廃絶運動に取り組む上智大3年中村涼香さん(22)は、被爆者から借りた着物を着て登壇。祖母の被爆体験や被爆3世としての苦悩を語った。国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長もスピーチした。参加した専門家たちは、核兵器の使用や核実験が人や環境に与える中長期的な被害、事故による核兵器爆発のリスクなどを議論。参加国数は公表されていないが、70カ国以上が参加したとみられる。

 非人道性会議は2013年のノルウェー・オスロでの第1回以降これまでに3回開かれ、今回が4回目。市民団体や国連、核軍縮推進派の非核保有国が主導した禁止条約の策定にもつながった。日本政府は4回とも出席している。

核兵器禁止条約
 核兵器の開発、保有、使用などの一切を禁止する初の国際条約。前文には「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記している。核兵器非保有国が非政府組織(NGO)などと連携して成立を主導。2017年7月、国連で核兵器を持たない122カ国・地域が賛成し、採択された。20年10月に批准国・地域が発効要件の50に達し、21年1月22日に発効した。現在の批准は62カ国・地域。核兵器保有国は参加していない。

核兵器の非人道性に関する国際会議
 核兵器が与える破滅的影響について議論する会議。広範囲の放射線被害、負傷者救護が不可能になることなどの懸念が2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で表明されて以降、非人道性の議論が活発化。13、14年に計3回、ノルウェーなどで開かれ、核兵器禁止条約制定の原動力になった。第3回には、米英が核保有五大国から初めて参加した。

(2022年6月21日朝刊掲載)

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