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消えない苦しみや不安 原爆は、人間らしく生きることも許さない 被爆者木戸さん 政府の姿勢批判も

 小柄な体から振り絞るように力強い声で語りかけた。「原爆は人間らしく生きることも許さない、人間と共存できない、非人道的絶対悪兵器です」。オーストリア・ウィーンで20日開かれた「核兵器の非人道性に関する国際会議」。5歳の時に長崎で被爆した日本被団協事務局長の木戸季市さん(82)が、癒えることのない被爆者の苦しみと核兵器廃絶への願いを国際社会に訴えた。(小林可奈 ウィーン発)

 1945年8月9日、木戸さんは爆心地から約2キロの地点で被爆し、顔を焼かれた。「ピカドーンと光を浴び、爆風で飛ばされ、気を失いました」

 爆心地近くで見た光景は今も脳裏に焼き付く。「何もかもなくなった街は、真っ黒」と振り返った。爆心地に近づくにつれ、死体や水を求める人々の姿を目にした。「このような死が、人間の死として認められるでしょうか」。強い口調で投げかけた。

 「被爆者の不安、苦しみは時がたって消え去るものではありません。どんどん大きくなっていくのです」。健康や子どもへの影響など、生涯続く被爆者の苦しみも伝えた。核兵器禁止条約を「被爆者の願いそのもの」と表現。締約国会議の成功を願うとともに「被爆国日本政府は、圧倒的多数の国民の願いに反し核兵器禁止条約に署名・批准をしていません」と日本政府の姿勢を批判した。

 ウクライナ情勢についても触れ、「被爆者は武力に武力で対抗することを求めません」と力を込めた。スピーチを終えた木戸さんには、海を渡って自身の声を届けた82歳の被爆者への賛意と敬意を表す大きな拍手が送られた。

(2022年6月21日朝刊掲載)

核兵器廃絶 一刻も早く 非人道性会議で被爆者 「絶対悪」ウィーンから訴え

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