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国防や生活 論戦火ぶた 参院選公示-中国地方-

 ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする安全保障環境が厳しさを増す中、22日に公示された参院選。中国地方の4選挙区に立った27人は国防や憲法改正、物価高などを争点に、初日から舌戦を繰り広げた。岸田文雄首相(広島1区)の政権運営の評価を巡り、与野党の支援を受けた立候補者の見方は割れる。投票日の7月10日に向け、支持拡大を狙うそれぞれの訴えを第一声から見た。

「経済対策で成果」 「家計への支援を」

 ウクライナ問題や急激な円安による物価高騰が暮らしを直撃する中、経済対策を巡る訴えも相次いだ。与党は岸田政権が進める原油高騰対策などの成果を強調する一方、野党は消費減税や最低賃金の引き上げなどの支援策を提案した。

 「岸田内閣も必死で経済対策に取り組んでいる。物価高は欧米諸国に比べれば相当抑えられている」。山口選挙区の自民党現職(65)は山口市で開いた出陣式で輸入に頼る原油や肥料の価格上昇に触れつつ、政府の緊急経済対策を着実に進める考えを示した。

 岡山選挙区の自民党現職(39)も岡山市中区で支持者を前に「責任政党の候補者として皆さまの苦しい思いを受け止め、応えていく」と寄り添う姿勢を見せた。

 ただ、広島選挙区の自民党現職(72)は広島市中区で「20年以上続くデフレからの脱却がままならない」との認識を示した。岸田首相が唱える「新しい資本主義」を進め、日本経済を再び成長軌道に乗せるべきだと主張した。

 一方で、野党は家計を支援する施策の必要性を訴えた。「シングルマザーの平均所得は240万円。どうやって暮らせばいいのか」。広島選挙区の無所属新人(52)は中区でこう語気を強め、国の支援を求めた。共産党新人(36)は中区で「大企業の内部留保を活用し、最低賃金を1500円にする」と訴えた。

 1人10万円の給付を求めたのは山口選挙区の国民民主党新人(48)。山口市でマイクを握り「ガソリンも高い。物価も高い。給料も上がらない」とまくし立てた。島根・鳥取合区選挙区の立憲民主党新人(34)も松江市で「政府や日銀から物価高が受け入れられているような発言が出てくる」と批判し、5%への消費税減税を訴えた。 し

露侵攻で危機感強調

非核・護憲の声も

 「世界の安全保障が危機に陥っている。日本人の命を、財産を守らないといけない」。広島選挙区(改選数2)の自民党現職(72)は出陣式でロシアのウクライナ侵攻に言及し、声を張り上げた。山口選挙区(改選数1)の自民党現職(65)も「侵攻は人ごとではないと、ひしひしと感じる。国防力をしっかりと上げていかないといけない」とアピールした。

 2人の発言の背景にあるのは、政府が経済財政運営の指針「骨太方針」に明記し、5年以内に抜本的に強化するとした防衛費だ。これまでは国内総生産(GDP)比1%ほどを目安にしてきたが、同2%以上への増額を視野に入れているとされる。

 岡山選挙区(改選数1)の自民党現職(39)も「この世界情勢の中、日本の平和は守られるのか。私たち国会議員の使命は国民と国を守ることだ。国民の不安を取り除きたい」と聴衆に語りかけた。

 こうした政府与党の姿勢に対し、野党の立候補者は「防衛費増額ありき」との批判を繰り広げた。4人の自民党現職が憲法改正に一人も触れなかったのとは対照的に、憲法9条の堅持や核兵器廃絶を訴える声も相次いだ。

 「日本も軍事力を拡大すべきだとの大合唱だ。軍事費を2倍にすることは際限のない軍拡競争に陥り、平和や暮らしを壊す」。島根・鳥取合区選挙区(改選数1)の共産党新人(46)はそう強調し、憲法9条を生かした平和外交を唱えた。他の共産党新人3人も憲法9条の堅持を訴えた。

 ロシアが核兵器の使用を示唆する中、広島選挙区の無所属新人(52)は「使用が現実的になっている」と危機感をあらわにした。その上で「唯一の戦争被爆国である日本がさらに指導力を持ち、核兵器廃絶を訴えなければならない」と語気を強めた。

 日本国内に米国の核兵器を配備し、米国と共同運用していく「核共有」を巡る見解も論点になった。広島選挙区の日本維新の会新人(46)は「核兵器廃絶の取り組みと現実的な安全保障の両立を議論している隊列に加わりたい」と力説。これに対し、山口選挙区の立憲民主党新人(52)は「非核三原則を破って核シェアリングする強硬な政治を決して許してはいけない」とくぎを刺した。

 中国地方で唯一、国民民主党が擁立した山口選挙区の新人(48)は安全保障には言及しなかった。

(2022年6月23日朝刊掲載)

広島選挙区 第一声 主な4候補の内容分析 最多10人 訴え交錯

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