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社説・コラム

サミット同行記 境信重 被爆地開催 ヒロシマ発信に力

 広島にどんなイメージを持っていますか―。取材と記事執筆の合間に、プレスルームで庶務に当たっていたドイツ人の女性に尋ねてみた。答えは「原爆で破壊された街ですよね」。その惨状や今の街の姿を知っているか聞くと「よく知りません」。先の大戦で戦争の愚かさ、平和の大切さを痛感したドイツだが、誰もが「ヒロシマ」に詳しいわけではないようだ。

 G7サミットが来年開かれる被爆地の広島市。岸田文雄首相は今回、ドイツでのサミットで「核兵器のない世界を目指す上で、核兵器の減少傾向を反転させてはならない」と訴えた。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器で威嚇し、核抑止力への信奉が他国でも高まっていることへの警鐘だろう。

 なぜ、核兵器廃絶を強く呼びかけなかったのか。首相が持って回った言い方をしたのは、核兵器保有国の米国、英国、フランスへの遠慮とも聞こえた。

 いかに非人道的な兵器で、「黒い雨」被害で今なお苦しむ人が多いかなどを語ってほしかった。来年の広島では被爆地選出の首相として、それこそ歴史的なスピーチを期待したい。

 冒頭の女性は、こんなエールをくれた。「サミットはヒロシマを世界中の多くの人に知ってもらうチャンスですよ。もっと発信してほしいですね」。被爆地に本社を置く新聞社の記者として、歴史的なサミットをどう報じるか。大きな宿題をもらった気がする。

(2022年6月29日朝刊掲載)

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