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与野党幹部 安保巡り論戦 核共有「議論始めよう」「被爆者を冒瀆」 防衛費「周辺は核武装」「軍拡の悪循環」

 参院選(10日投開票)の公示後、中国地方の各選挙区に与野党の代表や元首相たち「大物」が相次いで遊説に訪れている。ロシアのウクライナ侵攻を受けた安全保障の在り方などで舌戦を展開。前半戦の折り返しとなった30日は被爆地の広島市で、米国の核兵器を日米で共同運用する「核共有」を巡る応酬もあった。

 「非核三原則をきっちり議論し、核の共有の話もしよう。日本は丸腰。どうやって隣国の侵攻を止めるのか」。日本維新の会の馬場伸幸共同代表は30日、広島市中区の街頭で、核兵器の使用を示唆するロシアの脅威を説きつつ、「核共有」の議論開始を訴えた。党の公約を被爆地でも唱え、実現に意欲を見せた。

 これに対し、30日にJR広島駅(南区)前でマイクを握った立憲民主党の泉健太代表は「日本が強い兵器を持ったから強くなる単純な世界ではない。核兵器を配備したら真っ先に配備先が狙われる」と核共有の積極論を批判。一方で場合によっては防衛費増額を容認する姿勢を示し、新たな防衛分野への対応を唱えた。

 今回の参院選では、揺れる国際秩序を受けて安全保障に対する有権者の関心が高いとみて、各党はその論戦に力を入れている。

 「核共有論など、被爆者に対する冒瀆(ぼうとく)ではないか。核兵器廃絶こそやらなくちゃいけない」。社民党の福島瑞穂党首は28日、広島市中区の街頭で声を振り絞った。憲法9条の改正や、防衛予算の増額を掲げる自民党を批判し、予算を小中学校の給食費無償化や高校の授業料無償化に振り向けるべきだとアピールした。

 「日本はロシアと中国、北朝鮮に取り囲まれている。どこも核武装しており、安全保障環境は欧州より厳しい」と危機感を強調したのは自民党の安倍晋三元首相。24日、地元の下関市民会館で、憲法への自衛隊の明記や緊急事態条項の新設、防衛予算の拡充を訴えた。25日も山口県内を回り、同様の訴えをした。

 共産党は防衛費の増額を容認する声が与野党から出ている点を突く。24日、広島市中区の街頭に立った志位和夫委員長は「日本が軍拡で構えたら相手国も軍拡する。軍事対軍事の悪循環に陥る。これが一番危ない」。「敵基地攻撃能力」の保持に反対し、憲法9条堅持や核兵器禁止条約の批准を訴えた。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は23日、広島市中区での街頭演説で、ウクライナ情勢などの影響による物価高騰を取り上げ「制裁を課しているロシアから石油や天然ガスを輸入して対価を払っている」と矛盾を指摘。エネルギーの安定供給に向け、安全基準を満たした原発の稼働を主張した。

(2022年7月1日朝刊掲載)

[2022参院選 現場から] 核政策 被爆国の責任どこへ

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