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急務の核軍縮 難航必至 NPT会議あす開幕

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が8月1日、米ニューヨークの国連本部で始まる。核超大国の一つのロシアが核兵器の使用を示唆しつつウクライナに侵攻する中、急務の核軍縮を進める合意をできるかどうかが最大の焦点。難航必至の情勢で、岸田文雄首相が日本の首相として初めて出席し、演説する。被爆者たちも現地入りし、被爆地の声を背に「核兵器のない世界」の実現を訴える。(ニューヨーク発 小林可奈)

 会議は原則5年に1度だが、新型コロナウイルス禍で延び、7年ぶりの開催。約190カ国・地域の政府代表が同26日まで、「核軍縮」「核不拡散」「原子力の平和利用」というNPTの3本柱を協議し、今後の方策を盛り込んだ最終文書の採択を目指す。

 2015年の前回会議は中東の非核化などを巡って意見が対立し、決裂した。核軍縮・不拡散の「礎石」とされるNPT体制の維持へ国際社会は正念場を迎えているが、ウクライナ情勢が強い逆風となっている。核超大国の米ロ間をはじめ、国際社会で続く非難の応酬と緊張の高まりが合意形成の障壁となる。

 核兵器を全面的に違法化した核兵器禁止条約を巡っても非保有国と保有国の間で大きな溝がある。条約は15年の会議の決裂後、核軍縮の停滞に不満を持つ非保有国が主導して制定し、21年に発効した経緯がある。

 被爆国でありながら、米国の「核の傘」に安全保障を依存する日本政府を代表し、岸田首相は初日に演説する。禁止条約に背を向ける一方で保有国が加盟するNPTを重視し、核兵器のない世界に向けた「プラン」を示して国際社会の協力を呼びかける。難問山積の会議に首相自ら乗り込み、保有国と非保有国の「橋渡し役」として成果を上げられるか、外交手腕が問われることになる。

 新型コロナ禍や高齢のため、渡米して参加する被爆者たちは限られるが、会議や関連イベントで核兵器の非人道性を証言する。被爆77年の今なお、核兵器の脅威から逃れられない国際社会に警鐘を鳴らし、一日も早い廃絶へ協調を促す。

(2022年7月31日朝刊掲載)

[NPT再検討会議2022] 深まる対立 核兵器廃絶の道筋は 発効の禁止条約 どう影響

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