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[考 国葬] 国挙げて悼む 当たり前 元自民党政調会長 亀井静香氏/前提の国民的合意なし 東京大名誉教授 上野千鶴子氏

 安倍晋三元首相の国葬を巡って世論が割れている。閣議決定で国葬を決めた岸田内閣の支持率も急落した。歴代最長政権の業績を評価すべきだとの声がある一方、政治を私物化したとの批判はなお尽きない。元政治家や学者、安倍外交を注視してきた人たちに聞いた。

 国葬は27日、東京の日本武道館で開かれる。残り3週間となっても賛否が渦巻く状況に、元自民党政調会長で長年親交を結んだ亀井静香元衆院議員(85)は「大きな貢献をした元総理を、国を挙げて悼むのは当たり前だ」と強調。森友・加計学園問題などで非難を浴びた長期政権だが、亀井氏は「人生の傷より、光の部分に目を向けるべきだ」と述べ、とりわけ経済政策「アベノミクス」を評価した。

 対して、女性学が専門の上野千鶴子東京大名誉教授(74)はアベノミクスの負の側面を指摘。安全保障や新型コロナウイルス対策、ジェンダーを巡る施策にも目を向け「国論を二分した政策を推し進めた人を国民的合意が前提の国葬に付すのは認められない。自民党葬にすればいい」と訴える。

 主張が隔たる両氏だが、岸田文雄首相にはそろって手厳しい。上野氏の目に「腰が引けている」と映ったのは、国民に弔意を強制しないと首相が言い出したことだという。儀礼的な面もある諸外国の弔問をもって国葬の理由付けとしたことにも疑問を投げかける。

 亀井氏は国葬令がなくても「時の内閣が責任を持って判断すればいい」と閣議決定という形を取ったことを評価しながらも、国民に説明する姿勢に不満をこぼした。(下久保聖司、境信重)

(2022年9月7日朝刊掲載)

[考 国葬] 重箱の隅つつかず光に目を 元自民党政調会長 亀井静香氏/数々の失政 国民忘れてない 東京大名誉教授 上野千鶴子氏

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