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社説・コラム

広響音楽監督にアルミンク就任へ 手を取り合って高みへ 多様性満ちた音楽届ける

 2024年度から広島交響楽団の音楽監督に就任することが決まったオーストリア出身の指揮者クリスティアン・アルミンク。盟友である下野竜也・現音楽総監督からバトンを引き継ぐ決意と抱負を聞いた。(西村文)

  ―広響からの就任依頼をどう受け止めましたか。
 大変な喜びを感じた。広響と、広島の音楽を愛する方々のために貢献できることは光栄だ。広響の楽団員とは14年の初客演から毎年のように協演を重ね、関係を築いてきた。音楽監督として一緒に音楽をより深く探求したい。手を取り合って、高みに登って行けたらと願う。

  ―下野音楽総監督からのバトンをどう継承しますか。
 下野さんがウィーン留学中に師事したレオポルト・ハーガーさんは私の師でもある。下野さんがブルックナー、スッペ、シューベルトといった作曲家を取り上げてきたことで、広響はウィーンの音楽に関して演奏を磨いている。私が広響の音楽作りをする上ではとてもありがたいことだ。その上で、私のスタイルを築いていけたらと思う。

 24年度のプログラムについては検討中だが、モーツァルトには取り組みたいと考えている。

  ―広響の歴代音楽監督では初めての外国人指揮者です。欧米での活動との違いは感じますか。
 文化や言語の違いによる障壁はない。私は来日すると自分の家に帰ってきたような気持ちになる。両親がかつて日本で仕事をして、私も2歳まで滞在していたからかもしれない。広島は大好きな街で、時間を見つけては歩くようにしている。広島の人々はフレンドリー。平和記念公園は、人生にとって何が大切かを思い起こさせてくれる場所だ。

  ―広響が掲げる「ミュージック・フォー・ピース」についてどう考えますか。
 平和のメッセージを届けることが非常に重要な時代になってしまった。人類は過ちを経て進歩すると考えたいが、21世紀の今でも欧州では悲惨な事態が起きている。広響はさまざまな場所で生まれ育った楽団員が一緒に座り、ハーモニーを紡いでいる。美しい音楽を通じて、ミュージック・フォー・ピースを伝えていかなければならない。

 多様性に満ちた音楽の世界を届けていきたいと意気込んでいる。広島のみなさんにはぜひコンサートにお越しいただき、広響の仲間に加わっていただきたい。

クリスティアン・アルミンク
 1971年、オーストリア・ウィーン生まれ。ウィーン国立音楽大でレオポルト・ハーガーらに学んだ後、小澤征爾に師事した。スイスのルツェルン歌劇場音楽監督などを歴任。2003年から10年間、新日本フィルハーモニー交響楽団(東京)の音楽監督。17年4月から広島交響楽団の首席客演指揮者を務めている。

(2022年12月15日朝刊掲載)

広響音楽監督 アルミンクさん オーストリア出身 下野さんは桂冠指揮者に

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