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[ヒロシマの空白 街並み再現] 被爆前 ドームの業務風景 産業奨励館で勤務の男性撮影 資料館に寄贈

ネガ現存 繁華街のカットも

 米軍が広島市に原爆を投下する3~4年前、現在は世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)として知られる広島県産業奨励館や繁華街の本通り商店街(現中区)を撮影した写真26枚が原爆資料館(中区)に寄贈された。奨励館内に勤め先があった男性が写した館内での執務風景など珍しいカットが含まれ、被爆前の市内の写真で確認例がほとんどないネガフィルムが残る。資料館は「被爆前の街の多くの情報が得られる貴重な資料だ」としている。(編集委員・水川恭輔)

 撮影者は、奨励館2階に事務室があった日本貿易振興会社広島支店に勤めていた古河秀雄さん(2014年に93歳で死去)。奨励館の写真が主で、大きな窓が特徴の支店事務室や正面北側の門扉、南側の洋式庭園などを収めている。

 古河さんは1941年春ごろに同支店に就職し、42年末に召集されるまでの間に写真を撮った。資料館によると、事務室のカットはこれまで収集した写真で、原爆投下に最も時期が近い奨励館内の業務風景という。戦後も市内の自宅でフィルムを保管。98年に本紙の記事で写真の一部が紹介された。

 資料館は2022年秋、この記事にあらためて注目し、資料を受け継ぐ長男秀治さん(73)=安佐北区=に協力を依頼。写真画像の寄贈に応じた秀治さんからフィルムを借りてスキャンをし、画像データを収蔵した。

 同館は「非常に珍しいフィルムから解像度の高い画像を作成でき、市民の表情や服装、看板の文字といった細部からも当時の生活をうかがい知れる。被爆後の写真と見比べ、原爆で何が失われたのかを考えてほしい」としている。

(2023年1月4日朝刊掲載)

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