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黒い雨救済 集団提訴へ 広島 新基準導入後初めて

 広島原爆の投下後に降った「黒い雨」の被害者救済のため国が昨年4月に運用を始めた新たな被爆者認定基準を巡り、広島県や広島市に被爆者健康手帳を申請して却下された県内の複数の住民が、却下処分の取り消しを求めて広島地裁に集団提訴する方針を固めたことが2日、分かった。新基準を踏まえた集団提訴は初めてで、早ければ4月中になる見通し。

 新基準では証言や当時の居住地から黒い雨に遭ったことが否定できず、がんや肝硬変、白内障など11疾病のいずれかにかかっていれば被爆者と認め、手帳を交付する。白内障は現在は症状がなくても手術歴があれば認定するとした。黒い雨被害者の救済拡大を命じた2021年7月の広島高裁判決を踏まえ、厚生労働省が定めた。

 県や市によると、新基準の導入後、今年1月末時点で4218人が申請し、3281人の交付が認められた。一方、黒い雨に遭ったことや、11疾病にかかっていることが確認できないなどとして100人が却下された。

 弁護士たちでつくる支援団体は1月、却下された人や審査が長期化している人を対象にした相談会を広島市内で開催。参加した数人が提訴の意向を示したという。

 高裁判決は、黒い雨は従来の援護対象区域より広範囲に降った可能性があると指摘。区域外で雨に遭ったと主張した原告84人全員を被爆者と認めた。(堅次亮平)

黒い雨
 米国による広島への原爆投下直後に降った放射性物質や火災によるすすを含む雨。国は1976年、爆心地から広島市北西部にかけての長さ約19キロ、幅約11キロの楕円(だえん)形の範囲内を援護対象区域に指定。区域内で雨を浴びた住民には無料で健康診断をし、がんや白内障など11疾病のいずれかを発症した人に被爆者健康手帳を交付し、医療費を原則無料にするなどの援護策を講じてきた。区域外は援護対象から外されてきたが、2021年7月の広島高裁判決の確定を受け、国は新たな基準を定めた。

(2023年3月3日朝刊掲載)

雨に降られた記憶鮮明 救済必要な人まだいる 黒い雨提訴へ 住民・支援団体

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