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[被爆地の視座] 世界から核兵器なくせる 広島サミットへ本紙提言 惨禍直視 廃絶の力に

 国と国による争いの末に、米軍が落とした1発の原爆で、広島市民は無差別に命を奪われた。全滅した一家や、遺骨さえ見つかっていない犠牲者がいる。終戦後、がんや白血病といった放射線後障害で、大人も子どもも理不尽な死を遂げた。中国新聞は6日、広島市で19日に開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、核兵器廃絶に関する提言をまとめた。大統領や首相たちに対し、原爆の惨禍を直視し、被爆者の訴えを受け止め、世界から核兵器をなくすよう求める。(岡田浩平)

 提言は、原爆被害の実態に向き合う▽核抑止脱却への道筋を描く▽核兵器禁止条約批准を誓う▽世界のヒバクシャを支える▽核廃絶までG7が引っ張る―の5本柱とした。

 被爆地にあって、中国新聞は原爆犠牲者や被爆者、遺族たちに向き合いながら、核兵器の非人道性を発信してきた。連綿と取材を積み重ねてなお、原爆被害の全容はつかめていない。核と人類は共存できず、一刻も早く核兵器を廃絶するのが国際社会の目標だ。

 サミットで広島の地を踏む首脳たちは必ず平和記念公園を訪れ、緑豊かな公園となる前にあった戦時下の市民の営みに触れてほしい。原爆資料館で、動員学徒たち犠牲者の遺品一つ一つに刻まれた生と死を、遺族の叫びを、被爆者の傷みを感じてもらいたい。核兵器が人間に何をしたのか学び、威力におののいて抑止力強化へ走るのではなく、廃絶への力にすべきだ。

 ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で繰り返す「核のどう喝」は、1人の指導者の判断次第で、核兵器がみたび攻撃に使われる可能性がある現実を示す。核抑止力強化は、使用の危険性を高めるのと同義だ。誤発射や偶発的な事故でも甚大な被害を招く核兵器は、世界にとってリスクでしかない。足元の核危機を終わらせるため、ロシアの速やかな撤退と両国の停戦協議入りに向けた一層の外交努力が欠かせない。

 核抑止から脱却し、あらゆる国が核兵器を持たない―。その一歩を踏み出してこそ、広島サミットが歴史的な会議になる。核兵器禁止条約をはじめとした国際社会の規範に基づき、核兵器も戦争もない平和な世界をつくる責務をG7首脳たちは負っている。

(2023年5月7日朝刊掲載)

被爆地の視座 広島サミットへ中国新聞の提言  核なき日常を現実に

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