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岸田首相インタビュー詳報 防衛強化・積極外交進める 解散 今は考えていない

 岸田文雄首相は2日、中国新聞のインタビューで政権発足2年を控えた心境や今後の意気込みを語った。(中川雅晴、山本庸平、秋吉正哉)

 
【心境】

  ―2年間の政権運営を振り返り、いまの心境を聞かせてください。
 先送りできない課題に一つ一つ正面から向き合い、決断をして実行に移す。こうしたことを勇気を持って進めた。国の内外の変化を力にする。明日は今日より良くなる日本をつくる。

 
【原発】

  ―原発の再稼働や新増設を進める姿勢を鮮明にしたのは、どのような背景があるのですか。
 ロシアによるウクライナ侵攻などで、世界はエネルギー危機に直面している。その中で、日本もエネルギーの安定供給と気候変動問題への(対応の)両立が最重要課題として指摘されている。さらに日本はデジタル化を進めなければいけない。デジタル化を進めると、エネルギーの使用量が今の数十倍になるという試算もある。

 島国で有力な資源のない日本がデジタル化の中で経済を維持していくとなると、あらゆるエネルギー源を追求していかなければならない。国民生活や日本の未来を維持するため、原子力も再稼働などを考えた。ただ、いかなる事情より、安全性を優先しなければいけないのは当然のことだ。

 
【外交・安全保障】

  ―ウクライナ侵攻などの課題にどう対応しますか。昨年末の安保関連3文書改定に、軍備増強を懸念する声があります。
 戦後最も厳しく、複雑な安保環境に直面している。国民の安全と繁栄を守り抜くためには抑止力や対処力を高めなければならない。防衛力の強化と併せて、積極的な外交を進める。日本は戦後一貫して平和国家として歩んできた。憲法に定められた平和主義を守りながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化するために外交をリードしていく。

 
【核兵器廃絶】

  ―核なき世界に向け、被爆地選出の首相として被爆者の思いを、どう施策に反映させますか。
 ロシアの核威嚇や北朝鮮の核・ミサイル開発で国際社会の分断と対立が深まっている。核兵器のない世界への機運を盛り上げるため、広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、初のG7首脳独立文書となる広島ビジョンを出した。また、現実的、実践的な取り組みを進めようと、包括的核実験禁止条約(CTBT)や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)を、国際社会で強調している。

 被爆者の方々が早急な核廃絶を求めていることは従来から感じており、首相になっても重く受け止め、思いは間違いなく共有している。昨年発表した「ヒロシマ・アクション・プラン」を実行していくことで、切実な思いに応える。

 
【政治とカネ】

  ―2019年参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件は、当時の安倍政権の疑惑が先日新たに明らかになりました。今の閣僚も問題が指摘されています。自民党改革が今こそ必要と思います。
 政党改革は今こそではなく、絶えず求められている。自民党総裁選での訴えを実行するよう党改革を進めてきた。(総裁以外の役員任期を1期1年、連続3期までに制限する)党役員任期の問題から始まり、ガバナンスコード(統治原則)を初めて政党として導入した。先日も女性議員を増やす目標を掲げた。

 時代の変化が続いている。国民に信頼される政党であるためには自ら変わらなければならない。そうした思いで、改革の努力は続けていきたい。

 
【衆院解散・自民党総裁選】

  ―衆院解散をどう考えますか。来年秋の総裁選に臨む決意も伺います。
 再三申し上げているが、今は解散を考えていない。経済対策にしっかり取り組むことに尽きる。総裁選に向けては、一つ一つ先送りできない課題に取り組む積み重ねがどう評価されるかだ。引き続き努力しなければいけない課題がたくさんある中で、来年のことを先取りして言うのは順番が逆と思う。

(2023年10月3日朝刊掲載)

核なき世界「思い共有」 岸田首相 あす政権発足2年 「政治とカネ」改革誓う

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