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[核兵器禁止条約 第2回締約国会議] オブザーバー参加見送り 政府 被爆者の思いと溝

 政府は、27日に米国で始まる核兵器禁止条約第2回締約国会議へのオブザーバー参加を見送る。岸田文雄首相は条約を一定に評価しながらも、核保有国が加わらない段階での参加は「核兵器のない世界」を遠ざけるとの姿勢。参加を願う被爆者たちとは隔たりがある。

 会議への出席や発言を意味するオブザーバー参加は、条約の署名・批准よりはハードルが低い。10月下旬以降、広島、長崎出身の大学生や被爆者団体、松井一実広島市長らが次々と外務省を訪ねて要請した。

 外務省は議論を重ねてきた。参加見送りの背景を同省幹部は、条約に反対する米国などの核保有国と非保有国との「分断を深める可能性を考慮した」と説明する。

 対照的に被爆者では、日本被団協の木戸季市事務局長(83)が会議の中のテーマ別討論にパネリストとして出席。被爆体験などを話す予定でいる。

 被爆者や若者には被爆地選出の岸田首相への期待がある。外相時代は一貫して保有国と非保有国の「橋渡し」を掲げ、2年前の首相就任会見でも禁止条約について「核兵器のない世界を目指す際の出口に当たる大変重要な条約」と述べた。

 首相は、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の関連行事を9月に米国内で開くなど核軍縮政策に注力する。だが禁止条約に関しては今月の衆院本会議でも参加に消極的な姿勢を表明。日本政府の役割は、条約に「保有国を関与させる努力」だと述べた。

 日本と同じ米国の「核の傘」の下にいるドイツは昨年6月の初回会議にオブザーバー参加。核兵器廃絶の目標に共感を示した一方、核抑止を否定する禁止条約には加われないと主張した。

 日本政府関係者は「今参加してもドイツと同じことしか言えない」。条約と距離を置く姿勢が際立ち非保有国との溝が深まると懸念する。

 非政府組織(NGO)ピースボートの川崎哲(あきら)共同代表は首相に具体的な一歩を求める。「このままでは米国に忖度(そんたく)した首相として名を残す。被爆国のトップとして少なくとも禁止条約にオブザーバー参加し、非保有国の意見に耳を傾けるべきだ」(樋口浩二)

核兵器禁止条約
 核兵器の開発や製造、使用などを違法化した初の国際条約で2021年1月発効。前文で被爆者の苦しみや核兵器廃絶への努力に触れる。オーストラリアやメキシコなど核兵器非保有国が核軍縮の停滞などを踏まえて制定を主導。これまで93カ国・地域が署名、69カ国・地域が批准した。

(2023年11月21日朝刊掲載)

[核兵器禁止条約 第2回締約国会議] 「核の傘」依存の3国 豪・独・ノルウェーは参加

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