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国際賢人会議閉幕【解説】「脱核抑止」 議論深まらず

 世界に1万2500発ほどあるとされる核兵器を減らし、なくすには各国がどう行動すべきか。岸田文雄首相が創設した国際賢人会議は被爆地長崎で重い課題に向き合った。核不使用の姿勢を共有した半面、廃絶に欠かせない「核抑止からの脱却」を巡る議論が深まった形跡はうかがえない。

 賢人会議は今回、人工知能(AI)などの先端技術が核兵器の脅威を高める可能性や、核を巡る安全保障環境の変化を議論したという。あと3回ほど会合を持ち、2025年をめどに提言をまとめるというが、討議は大半が非公開で検証できない。何より、核兵器廃絶の最大の障壁である核抑止の克服に挑む姿勢が見えないのは疑問だ。

 折しも、1日まで開かれた核兵器禁止条約の第2回締約国会議は「抑止からの脱却」が主題の一つだった。核兵器の存在が引き起こす「安全保障上のまっとうな懸念」をオーストリアが中心となって精査すると決めた。

 日本政府こそ、こうした機運に乗じて、核抑止の脱却に向けた議論を主導していくべきではないのか。賢人会議後の記者会見では、中国の委員が「核抑止は一時的なツールであるべきだ」と限界を示唆する発言をした。

 ウクライナやパレスチナ自治区ガザで紛争が続き、核兵器使用の恐れは消えない。広島、長崎の惨禍を知る被爆国として不使用はもちろん、廃絶を強く訴えなければならない。その先頭に、被爆地広島選出の岸田首相が立つべきだ。(樋口浩二)

(2023年12月10日朝刊掲載)

核なき世界へ外交重視 国際賢人会議閉幕 首相「指導力発揮」

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