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連載・特集

経済の縮み思考 脱却へ 岸田首相インタビュー詳報 核廃絶 広島の影響力生かす

 岸田文雄首相は中国新聞のインタビューで、新年の抱負や核兵器廃絶への思い、「政治とカネ」問題などを語った。「政治は結果」と述べるとともに、核廃絶という理想にまい進する姿勢も改めて示した。(中川雅晴)

 
【抱負】

  ―今年の抱負を聞かせてください。
 政権が発足して2年以上の間、経済、社会、外交などさまざまな分野で積み重ねをしてきた。今年はその成果を具体的な形で示したい。

 経済では賃上げを中心に官民で努力し、成長と分配の好循環を実現したい。従来のデフレ心理とコストカットの縮み思考から脱却して新しい経済のステージに押し上げる。子ども・子育て政策は児童手当の拡充などで示す。外交では世界で国政選挙がめじろ押しだ。積み重ねた首脳外交を推し進めたい。

  ―支持率をどう引き上げますか。
 支持率を通じて国民の皆さんの厳しい声には謙虚に耳を傾ける。政治は結果だ。先送りできない課題に取り組んできたことを国民に感じてもらうことが重要と強く思う。

 
【核兵器廃絶】

  ―広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)ではインドを含む4カ国の核保有国のリーダーが訪れました。核兵器のない世界に向けた次のステップは。
 サミットで、G7として初めて核軍縮・不拡散に関する独立首脳文書をまとめた。何より多くの国々と核兵器のない世界を目指す思いを共有できた。昨年9月の国連総会では、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の(成立を目指すための)ハイレベル行事を主催した。

 核兵器のない世界を目指すという理想は決して忘れてはならない。そのロードマップを具体的に示すのが政治の大きな責任だ。一昨年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で明らかにした「ヒロシマ・アクション・プラン」を実行していく。

  ―核兵器禁止条約のオブザーバー参加への考えは。
 条約は核兵器のない理想に向けて出口になり得る。しかし核兵器国は一カ国も参加していない。核兵器国を理想にどう近づけるかを考えなければならない。それを示し、努力する役割を唯一の戦争被爆国日本は担っていると確信している。

  ―軍縮の象徴がスイス・ジュネーブであるように復興の象徴が広島と思います。国際会議や専門機関を誘致するのはどうですか。
 サミットを経て改めて思ったのは広島という街の発信力の大きさだった。国際世論に対する影響力を前向きな形で生かしていくことは重要だ。

 
【国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」】

  ―広島原爆の視覚的資料のユネスコ登録の可否が2025年春に決まります。被爆80年の節目。核兵器の非人道性をアピールする絶好機です。
 原爆で被災した市民や当時の報道カメラマンの皆さんが記録された貴重な資料で、世界的に重視しなければならない。政府として登録に向けて努力したい。核兵器のない世界に向けての全ての取り組みの原点は被爆の実相に触れること。原爆の痕跡や記録を後世に引き継ぐ取り組みが重要だ。

 
【「政治とカネ」問題】

  ―首相は1993年の初当選時に政治改革を訴えていました。自民党派閥の「政治とカネ」問題では思い切った政治改革の具体策が必要です。
 まず国民の皆さんの政治に対する不信を招いていることには強い危機感がある。おわびしなければならない。政治に関する者は絶えず緊張感を持って自らを律し、この問題に取り組み続けなければならない。党全体の問題として一致結束して取り組む。党総裁である私はその先頭に立つ。

  ―河井克行元法相による大規模買収事件では、当時の安倍政権幹部から現金6700万円を受け取った疑いを示すメモの存在が明らかになっています。党として原資の問題を調査しますか。
 報道は承知しているが、そういう事実は把握していない。党から出たお金は買収に直接使われていなかったとの調査結果が示されている。党が正式に調査したものは尊重しなければならない。

(2024年1月1日朝刊掲載)

政治とカネ対応「先頭に」 岸田首相に本社社長インタビュー 広島原爆写真 記憶遺産へ全力

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